「男だから何?」男性至上主義の価値観は私の中にもあった

離婚から7年、39歳のときに仕事の取引先として出会った2歳下の女性と親しくなった。新一さんにも相手にも結婚願望はなく、良きパートナーとしての関係が続いていた。そんな中、新一さんが職場で昇進することに。負担は増えるもやりがいを感じていたその数か月後、新型コロナが日本に入ってきて、仕事の取り組み方が一変する。

「仕事はインバウンド事業だったので、大打撃でした。新規の仕事はなくなり、継続できない仕事も増える。コロナ明けに向けて新規事業を画策していくも、それは上の人たちだけの仕事となり、溢れる社員が増えてくる。給料カットで自宅待機になる部下からの不満が一気に私に押し寄せてきました。上からの意見を私が一度集約して部下たちに伝えるような仕事も増えて、また下からは不満が続出する。まさに板挟み状態でした。そんな中で不安定になっていく自分がわかりました。食欲もなく、お腹を下すことも多くなって体重が5キロ以上落ちて、夜も眠れなくなりました」

そんな異変に気付いたのはパートナーの女性。薄くなった新一さんの体を見て、話を聞いてくれたという。そして話を聞き終わったときに女性のほうからプロポーズを受ける。

「『少し休もう。私の扶養に入らない?』と明るく聞いてくれました。そのときに自然と『でも自分は男で……』という言葉が出て、男性はこうあるべきという価値観に支配されていることに気づいたんです。男だから支えるべきだし、男は仕事をするべきだと。そんな私を見て、『男だから、何? 男とか女とか今関係ある?』と彼女は言いました。

その後、仕事を辞めて、結婚しました。今はフリーランスとして少し仕事をしながら家事を頑張っている感じです。妻は相変わらず男前で、ガサツなところもあって、いい意味で今までの私の価値観を崩してくれています(笑)。今はとても楽。妻は頻繁に好きという言葉もくれるので、幸せです」

* * *

コロナ禍によって仕事を追われることになった場合もあれば、新一さんのように職場の変容によって仕事が集中する事態も起こった。「女性は社会進出を」と叫ばれている世の中ではあるが、男性が家庭に入ることにはまだ、多くの家庭で抵抗があるように感じられる。家事は立派な労働である。“主夫”という言葉ももっと世の中に広がっていくことを切に願う。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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