制度の導入以後、少しずつ浸透し、ふるさと納税は今や代表的な節税対策となりました。制度を正しく理解することで、大きな節税効果を享受することができます。しかし、節税効果を受けるためには、ふるさと納税の「申し込み期間」や「手続き期限」に留意する必要があるでしょう。
そこで今回は日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、ふるさと納税の申し込み期間、控除を受けるための手続きや期間についてご紹介いたします。
目次
ふるさと納税の申し込み期間は?
控除を受けるために必要な手続きとその期限は?
申告の期間が過ぎてしまったら?
まとめ
ふるさと納税の申し込み期間は?
ふるさと納税はポータルサイトにより四六時中、申し込みを受け付けているため、いつでも思い立ったときに申し込みすることが可能です。しかし、ふるさと納税により寄付を行い、所得税や住民税の還付・控除を受ける場合には、還付・控除をいつ受けたいかによって申し込む時期を調整する必要があります。
2022年における所得税の還付を受けたい、もしくは2023年6月から2024年5月における住民税を抑えたい場合には、2022年12月末までにふるさと納税の申し込みを完了させなければなりません。寄付金の支払い方法によって申込完了日が異なる点についても、注意が必要です。
申込完了日は、それぞれ以下の通りです。
・銀行振込… 指定口座に振り込んだ日
・現金書留… 自治体側で受領した日
・クレジットカード支払… 決済が完了した日
最も早く申込が完了する手段はクレジットカードによる支払いです。支払いのために銀行やコンビニに出向く必要がありません。特にふるさと納税は、その年の所得金額によって上限が異なります。そのため、冬季賞与の支給を確認して、最終的に寄付額を決断される方が多いと思いますので、年末の締め切りを意識しましょう。
控除を受けるために必要な手続きとその期限は?
ふるさと納税により所得税や住民税の還付・控除を受けるためには、「ワンストップ特例制度」と「確定申告」の2種類の方法があります。
ワンストップ特例制度
通常は確定申告により寄付金控除を受けるために申告をする必要があります。しかし以下の要件を満たす場合は、確定申告を行わずにふるさと納税による寄付金控除を受けることが可能です。
・1年間(1月から12月)でふるさと納税の寄付先が5自治体以内であること
1年間5自治体であれば、寄付を何度でも行うことができます。
・確定申告が不要とされる給与所得者等であること
年収2,000万円を超える給与所得者や、医療費控除を受ける方は確定申告により寄付金控除を受けましょう。
・寄付先の自治体から郵送される特例申請書に必要事項を記載し、マイナンバーカードなどの身分証明書と一緒に、翌年1月10日までに自治体に提出すること
「翌年1月10日までに必着」が要件となっているため、早めに手続きを行いましょう。特例申請書はポータルサイトからダウンロードすることができます。そのため、ふるさと納税の申込が年末間際となってしまった場合でも手続きを行うことが可能です。
確定申告
もともと確定申告が必要な方であれば、通常通り確定申告により寄付金控除を受けることになります。また、うっかり6自治体以上に寄付を行ってしまった方や、ワンストップ特例制度の期限に間に合わなかった方も、確定申告を行うことで寄付金控除を受けることが可能です。この場合、翌年3月15日までにe-TAXないしは書面により確定申告を行う必要があります。
また、従来、寄付金控除を受けるために、各自治体からの寄付金受領証明書を確定申告に添付する必要がありました。そのため、仮に100件以上の自治体にふるさと納税を行う方は、100枚以上の寄付金受領証明書を管理しなければなりませんでした。寄付金受領証明書を紛失してしまった場合には、確定申告のために再発行手続きを行うなど、手間がかかっていましたが、2022年の確定申告により寄付金控除の要件が簡略化されています。
2022年の確定申告により、ポータルサイトによりダウンロードできる「寄附金控除に関する証明書(XMLデータ)」を確定申告書に添付することが認められました。「寄附金控除に関する証明書(XMLデータ)」は、年間のふるさと納税の履歴が記載されており、従来のように数多くの寄付金受領証明書を管理する必要がなくなったのです。
申告の期間が過ぎてしまったら?
確定申告期限は翌年3月15日になりますが、日々の忙しさによりうっかり確定申告を忘れてしまう方がいらっしゃいます。寄付金控除が受けられなくなるのでは? と懸念される方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、寄付金控除の有効期限は「法定申告期限(翌年3月15日)から5年以内」と設けられています。そのため、有効期限内に還付申告、または更正の請求を行えば、無事に寄付金控除を受けることが可能です。法定申告期限(翌年3月15日)から5年の期間が過ぎてしまったら、寄付金控除を受けることができなくなります。
まとめ
ふるさと納税は限度額を把握し、限度額の範囲内で寄付を行えば、所得税・住民税の控除を受けることができ、実質2,000円の負担により全国の返礼品を楽しむことができます。しかし、決められた期限に沿って手続きをしなければ、所得税・住民税の控除を受けられず、ただ自治体に寄付しただけになってしまうかもしれません。そのため制度内容を正しく理解して活用していただきたいと思います。
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)