「好きになってしまったんだ」

夫は箸の上げ下げの所作が美しく、大衆的な料理店で目立っていました。常連のようでアルバイトらしき女性従業員とアイコンタクトをとっていたのです。この女性は色が白くスリムな体型をしており、依頼者・結子さんに似ています。

20時5分になると夫は会計を済ませて、店を飛び出すように出ていく。そして、店から50メートルほど離れた石垣の前で黒い服を着た女性が自転車を引きつつ待っていました。

2人はゆっくり歩き、マンションへ。その間、自転車での移動も予想し、ペアの探偵は折り畳みの電動自転車を取りに事務所まで戻ります。

それから3時間後に2人で出てきて、夫は大通りまでお見送り。女性は「またね!」と元気よく言い、帰宅。自宅は自転車で15分程度の一戸建てでした。女性について調べると、中古車販売会社を経営する夫、大学生の息子2人がいる48歳。夫とは家庭内別居状態であることもわかりました。

この証拠を結子さんに見せると絶句して泣き崩れてしまったのです。このケースは既婚者同士の恋愛なので、単なる息抜きとして付き合っている可能性が高い。結子さんは「離婚をしたくない」と言っているので、正面切って調査結果を見せると、夫婦関係に亀裂が入る可能性もあります。

そのことを伝えると「いいえ、白黒はっきりさせます」と言って、事務所を出ていきました。

夜に「夫から“彼女を好きになってしまった。これから自由になりたい。離婚をしないか”と言われました。私はどうすればいいのでしょうか」と連絡が入ったのです。

それから長い話をまとめると、夫は結子さんと長い老後の時間を過ごすことを避けたいと感じ、半年前に学生時代を過ごした街にマンションを購入。オーディオやワインセラーなど自分の好みの空間を得て、そこで時間を過ごそうと計画し、実行。

すると、思いのほか快適で、入り浸るように。夫は家庭料理が苦手なために、近隣の飲食店を開拓。そのうちに、コスパがいい中華チェーンによく行くようになり、女性と知り合ったのだとか。

「主人の方からアタックしたんだそうです。彼女は発言が面白く、万事に受け身な私といるよりも楽しいんだそうです」

といっても、女性は離婚する気もなく、夫も離婚して再婚する気持ちもない。結局、結子さん夫妻は、籍を入れたまま別居し、週末だけ自宅で夫婦として過ごすことにしたそうです。

夫に依存していた結子さんも、夫が離れてしまえば自分の人生を謳歌するようになり、友達と旅行をしたり、映画鑑賞や観劇なども楽しむようになり、「1人暮らしも楽しい」と思うようになったのだとか。

このケースは夫の浮気がきっかけでしたが、定年退職後に別居して「友達に戻る」という夫婦はじわじわと増えているようにも感じます。それを機に、財産や相続について本格的に整理するようにもなるようです。夫婦の形は十人十色だとあらためて感じました。

探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/

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