関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

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今回の依頼者は専業主婦の結子さん(57歳)です。「結婚30年になる主人(64歳)が外泊を繰り返すようになったのですが、怖くて何も聞けないんです」と言います。

パーフェクトで誰もが羨む夫

長年、浮気調査を行ってきて、外泊を繰り返すことと、スマホを隠すようになることは、浮気の2大サインとも言えます。

「結婚30年間、主人の浮気を疑ったことは一度もありませんでした。ただ、今年は定年になるので、いろいろ思うところがあるのでしょうか。半年くらい前から私が話しかけても、上の空になってしまったのです」

結子さんは専業主婦として2人の娘を育て、長女のところには孫もいるそうです。何不自由なく生活している人がもっている中立的かつ優しい雰囲気をまとっています。よく手入れされたハイブランドの靴やバッグが体になじんでいました。

ただ、気になったのは、夫に対して「怖くて何も聞けない」と言ったこと。DVやモラハラなどを受けているのかと思ったら、「それは全くありません」と言います。

「主人は人間的にも素晴らしく、私や娘たちをとても愛してくれています。娘たちの進路は全力で応援し、娘たちも何かあると“パパ、これどうしたらいいと思う?”と聞くのです。私が怖いのは、主人から離婚されてしまうことです」

聞けば夫は名門国立大学を卒業後、超大手の重機メーカーに勤務。欧州や北米で辣腕を振るい、アジアのマーケットも開拓。現地の貧しい子供達が通学するための支援活動なども行っていたそうです。

「娘たちと一緒に、私にも難しい話をよくしています。お友達にも“あなたの家はご主人が素晴らしくてホントにいいわね”と言われており、自分でもそう思います。7歳年上だからでしょうか、兄を慕うような気持ちになることも。でも、夫は越権行為や余計な詮索をする人に対して、スッパリと切り捨てるところがあります」

そんな夫の写真を見せていただくと、さっぱりと刈り込んだヘアスタイルと、さわやかな笑顔、筋肉質な体が印象的です。清潔感があり、実年齢には見えない。人格的にも優れた人であることが写真からもにじみ出ています。こういう人は女性にモテる。

「はい。ママ友から粉をかけられたこともあるようですが、主人は潔癖。“子供がいるのに恋愛をしようとする人は生臭いよ”と言っていました」

結子さんご夫妻のなれそめを伺うと、お互いの両親が親しかったから。幼いころから「この人と結婚する」と意識しており、自然な流れで結ばれたそう。

「ずっと主人だけを見てきて、何も考えなかったから、その報いが来ているのでしょうか」

【無断外泊を繰り返す夫……次のページに続きます】

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