「私なんて、皆さんに比べれば全然だめです」と言ってしまう
同好の士が集まる、SNS上の趣味の集まり。ライブ機能やZoomのやり取りでは物足りなくなり、コロナも落ち着いた半年前に会うことになった。
「皆さん実際はとても素敵な方なんですよ。手作りアクセサリーを売っている人って、私みたいな地味な主婦とか、時間がある学生さんだけかと思っていたんですが、全然違うんです。表参道のオシャレなカフェに集まったのは、フリーライター、テーブルコーディネーター、ワインアドバイザーなどすごい人ばかり。いかに趣味で繋がっているとはいえ、若い頃とは異なり、“なんとなく友達”って感じにはならないですよね」
集まったメンバーは50代ばかり5人。朋絵さんとフリーライターの恵麻さん(56歳)だけが子供がいなかった。
「趣味の話は最初だけ。皆さん結婚していてご主人もいるでしょ。子供の学校や勤務先の話、結婚のこと、お嫁さん候補のこと、お子さんが家を買うのに頭金を出すの出さないの、ご主人のこと、など家族の話ばかりになってしまったんです。私と恵麻さんは家族がいないので、2人で苦笑いしつつ、アクセサリーの素材についてや、好きな作家の話をしていました」
2人で何度か話すうちに、恵麻さんとは立ち入った話をするようになる。
「恵麻さんは小さな出版社に勤務していたそうです。コロナを機に独立をしたそうなんですが、それまで仲がよかった同僚から、“あなたはいいわね”というような感じで、嫌味を言われて傷ついていました。“フリーになったらくたびれたみたいね”などと言う人もいたみたいですね」
それに対して、朋絵さんは「私なんて全然ダメよ」「つまらない専業主婦よ」などと励まそうとした。すると恵麻さんは、「そんなにへりくだらないでください」とたしなめた。
「ホントにステキな人だなと感動してしまったんです。話題も尽きず、毎日でも会いたくなった。恋をしていたような気持ちだったと思います。LINEをしても、返事が遅いと気になってソワソワした。買い物の約束をしても、“急に仕事が入って、ごめんなさい”と謝られると恵麻さんを許す気持ちよさに心が震えたんです」
そして、恵麻さんの仕事が世に出るたびに、「あなたはすごいわ」「うらやましいわ」と応援した。
「最初は“ありがとう”と言ってくれたんですけど、最近は距離を置かれている気になるんです」
【LINEを未読スルーされて、家に行ってしまう……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。