関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は「娘(37歳)の夫(35歳)を調べてほしい」という、道子さん(64歳)ご夫妻です。道子さんの夫はほぼ付き添い状態で、口が達者な奥さんを頼もしく思っている様子を感じました。道子さんは都内の飲食店で経理のパートをしており、夫は大手OA機器メーカーの子会社に定年後も勤務しています。
娘がアプリで出会った韓流イケメンのような男性と結婚
道子さんは「それなりに貯えがあり、人生100年時代に備えて、細く長く働こうと体制を整えたら、まさかの伏兵登場ですよ!」とかなりお怒りになっていました。お話を伺っていると、思ったことを強い言葉で言ってしまう性格のようです。
「調べてほしいのは、一人娘の婿です。娘とは結婚2年になります」と紙の写真を20枚ほどテーブルの上に並べてくれました。「これが結婚式でしょ。これは孫が生まれたときの。こっちは旅行ね」などとおっしゃっています。
娘も道子さんご夫妻に似て、大変愛らしい容姿をしています。しかし、夫と並ぶとその美貌もかすむ。夫は韓流スターのようなルックスをしています。このタイプの男性は、自分がカッコいいことをよくわかっている。幼いころから周囲の人にかわいがられたり恋愛対象になっていたりするので、女性側が気を引くために自己犠牲も問わない人が多いのです。
「そうなんですよ。この男も“誰かが後始末をしてくれるでしょ”と思っているところがあるんです。また、自分自身が有利に行動するためには、周囲の人から大切なものを奪っても、自己正当化しているようなところがある。容姿がここまで優れていて、芸能系の仕事をしていないというのは、心根の問題だと思うんです」
娘とこの男性が結婚した背景を伺いました。
「今はやりのマッチングアプリですよ。娘は結婚まで実家にいて、それなりに男性とお付き合いしていたんですが、相手に難癖付けて結婚しなかったんです。そうこうするうちに、35歳になって、コロナ禍に入ってしまった。こっちは一人娘だし、孫の顔が見たいじゃないですか。それに娘には実家から出て行ってもらいたい。掃除も洗濯も私に任せっきりで、そろそろ母業から解放されたかったんです」
そこで、毎日「孫がまだ? その前に結婚しないと」とプレッシャーを与えたところ、娘は「それって孫ハラスメント・孫ハラだよ!」と怒り、婚活のスピードを速めたのだそう。
【ステイホームの間、孫プレッシャーを与え続けた……次のページに続きます】