会社を経営されている方にとって、税金をどれだけ納める必要があるのか、関心を持たれているのではないでしょうか。納税は会社を経営する中で必要不可欠なものですが、会社をより成長させるために知っておくべき節税対策が複数ございます。
そこで今回は、日本クレアス税理士法人の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、法人の具体的な節税対策についてお話ししたいと思います。
目次
法人税とは?
法人の節税対策で押さえておきたいポイントとは?
法人ができる節税対策とは?
まとめ
法人税とは?
法人税とは、法人が獲得した利益に対して課税される税金です。法人の利益は、収益金額から費用金額を差し引いて計算します。収益金額とは、商品・製品などの販売による売上収入や、土地・建物の売却収入などです。また費用金額とは、売上原価や販売管理費など費用や損失が該当します。
法人が獲得した利益には「法人税」のみ課税されるのではありません。「地方法人税」「法人住民税」「法人事業税」「特別法人事業税」などといった地方税に関する税金も、併せて課税されることになります。
申告納税期限
法人税は法人の事業年度が終了してから2か月以内に申告を行って税額を税務署に納める必要があります。例えば、3月決算の法人であれば、5月末までに申告納税しなければなりません。申告納税期限までに納税が間に合うように、どれだけ税金がかかるのか、また、納税する資金があるのか、早い段階から把握しておくことが重要です。
実効税率
それでは、利益に対していくら税金がかかるのかについてもお話しいたします。
法人が獲得した利益については一定の所得基準に応じて税率が変更しますが、利益に対しておおよそ34%の税率が課税されると、ご認識いただければと思います。利益の多寡、または資本金の大小に応じて税率が多少引き下がることがあります。しかし、税率がおおよそ34%と把握しておけば、納税額の予測も立てやすくなるでしょう。
法人の節税対策で押さえておきたいポイントとは?
納税は国民の義務、法人の義務です。利益を残すことができれば、納税を行うことは当然のこと。とはいえ、まとまった金額を一時的にキャッシュアウトすることになります。資金難などの理由で会社経営に影響を及ぼすことがないように、税金を抑えるに越したことはありません。
税金対策の失敗談をよく耳にすることがあります。「売上を除外したことを税務署にばれて、結果的に多額の罰金を支払うこととなった」や、「会社が儲かったので、多額の設備投資を行ったが、減価償却の対象で想像していたより、節税効果がなかった」など。このような誤った税金対策を行ってしまうと、想定している効果が得られないどころか、税金対策を行わないほうがマシといった事態が生じかねません。税法に従った正しい節税対策を把握することが何より重要です。
法人ができる節税対策とは?
ここでは、税法に従った正しい節税対策のうち、代表的なものをご紹介したいと思います(中小企業者で青色申告をしている法人を前提にしています)。
給与増額を利用した税額控除
人手不足が叫ばれる中、既存の従業員の確保は会社を成長させるために不可欠となります。従業員を確保しておくためには、やはり昇給幅や賞与での利益還元が大切です。税金の計算においても従業員への給与を増額した法人については、「所得拡大促進税制」という優遇措置を設けています。
通常であれば、法人の利益に対して34%の税金がかかります。しかし、従業員へ支給する給与が前期の給与と比較して1.5%以上増額していれば、給与増加額の15%相当額の税額控除を受けることが可能です。
設備投資を利用した税額控除
国は法人の成長を促す意味合いで、設備投資を積極的に行う法人に対しては税金面で優遇措置を設けています。「中小企業投資促進税制」といい、新品の機械装置やソフトウェアを購入することで、購入金額の7%相当額の税額控除もしくは、30%の特別償却を受けることができます。
少額減価償却資産を経費に
原則的な取り扱いとして、単価10万円以上の備品や設備などの固定資産を購入すると、購入年に全額経費にすることはできず、耐用年数に応じて減価償却することになります。しかし、青色申告書を提出している中小企業者であれば、特例として単価30万円未満の固定資産の購入であれば、単価10万円以上であっても、年間300万円まで購入年に一括して経費に計上することが可能です。
短期前払費用の活用
利益が多額に生じてしまい、決算間際に緊急な節税対策が迫られる場合には、「短期前払費用」の活用をご検討ください。「短期前払費用」とは、支払った日から1年以内に得られるサービスに対して費用を支払った場合、その支払額を支払年の経費として一括計上することができるといった手法です。
通常であれば、1か月分の家賃を毎月支払うことになります。しかし、決算間際に「家賃の支払時期を1年に1回、将来1年分の家賃を支払う」という契約に変更すれば、来年分の1年間相当額の家賃を、今回の決算で経費として計上することができます。
家賃の他に、リース料、保守料、火災保険料なども対象にすることが可能ですが、節税効果は初年度の1回限りという点に注意が必要です。1回契約内容を変更してしまうと、翌期から経費にできる金額は1年分となります。そのため、どうしても困った際に活用できる節税対策であるといえるでしょう。
まとめ
税金を抑えるということは、多くの場合一般的に利益を減らすこと、つまりキャッシュアウトを増やすことに繋がります。節税対策を行ったことで、資金が枯渇して経営が圧迫されるような、短絡的な節税対策はおすすめできません。また、節税対策は計画性をもって実施することが重要です。節税対策をご希望の方は、早い段階から専門家にご相談することをおすすめいたします。
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)