最初から、一度も母親じゃなかった
これといった会話のないまま、継子は高校生に。素行不良や問題行動をすることはないものの、アルバイトを始めたり、友人の家に泊まりに行くと言い、家にいる時間がさらに少なくなっていったそう。それでも由香里さんはまだ仲良くしたいという思いがあったと言います。しかし、そんな気持ちがゼロになるような出来事が起こります。
「私は先に休んでいた中、夜遅くに夫と息子が2人で夜食を食べていたようで、そのときの会話を聞いてしまったんです。夫からアルバイト代で母の日とか考えてないのかみたいなことを聞いていて、それに対して息子は『母親じゃないでしょ、あんたの嫁だろ』って言ったんですよ。隣の部屋なのに、まるで聞こえてもいいような声のボリュームでした……。
息子だとずっと思おうとしていたのに、私のことを母親だと思う気さえなかったということですよね。怒りなどはなく、もういいやという気持ちになりました。
そして、そんな私を不憫に思ったのか、夫から母の日の花束を貰いました。夫からは『母親をしてくれていてありがとう』と言われましたが、『母親になれた日は1日もなかったのに……』とより空しくなりましたね」
継子は今大学生で愛知県を離れて東京で暮らしており、関係は進むことも後退することもなく、現状維持が続いているとのこと。正直なところ「気が少し楽」だそう。そんなことを思う罪悪感もなくなったと言います。
「世の中には分かり合えた義理の親子ももちろんいると思いますが、私たちがそうじゃなかっただけ。最初から他人だと思っているなら、彼が私に対してずっと敬語を崩さなかったのも頷けます。『これ以上入ってくるな』というサインをひしひしと感じていたのに、無理やりそうじゃないと思い込もうとしていたんですよね。
夫のことは好きなので、別れることは考えていません。お互いの望み通り、夫の嫁としての生活を続けるだけです」
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。