関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

***

今回の依頼者は、智子さん(66歳)です。結婚42年になる会社経営の夫(66歳)が採用した40代の女性と恋愛関係になっていると、次期社長である息子(41歳)が指摘。その浮気調査に私たちは動き出しました。

【それまでの経緯は前編で】

夫は役員と共にランチをしていたが……

智子さんは夫の行動パターンを熟知していました。朝9時に家を出て、10時に出勤、18時まで執務をして、その後接待などの社交に出ていき、23時には帰宅するというのがよくあるパターン。

「浮気していると息子が伝えに来てからも、朝帰りすることはありません」とおっしゃっていました。

朝から都内の邸宅街で張り込み。9時に迎えに来たハイヤーに乗り、会社へと向かいます。夫は高価なスーツを着ていますが、中肉中背の優しそうな66歳の男性です。

会社に到着してからは特に動きはありませんでした。ランチタイムになると、男性5人と出てきて、会社近くの鰻屋さんへ。会話の内容を聞いていると、叱咤激励しつつ、それぞれの長所をほめているような内容でした。「いいリーダーだな」と思いました。

60分程度で食事が終わり、役員たちとは別れて、1人で喫茶店に向かいます。そこで5分ほどすると、40代のふくよかな女性がやってきました。「遅くなりました」と汗をかいていますが、水玉模様のワンピースが、可愛らしいです。すると、夫は相好を崩して「いいんだよ」と笑っています。

女性は通勤バッグを持っているので、このまま帰宅するのでしょうか。2人は店を出て、タクシーに乗ってラグジュアリーホテルに入っていきました。このホテルはこぢんまりとしていますが、1泊10万円以上と高額。夫も女性もホテルスタッフとは顔見知りのようで「ああ、どうも」という雰囲気で入っていきます。

夫は周囲を警戒しているのか、自分だけ先に部屋に向かい、女性はロビーでこれ見よがしにPCを開いたり、業務連絡をしたりしており、「このホテルを使い、リモートワークをしていた」という言い訳が成立するとも感じました。

このホテルのセキュリティーは強固で、探偵が中に入ることはできません。女性はロビーにおり、ホテルの人にプリントアウトを依頼するなど、仕事をしているというアピールをしきりにしていました。

【電話がかかってきて部屋に上がり、3時間が経過した……次のページに続きます】

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