関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

***

今回の依頼者は、大手通信関連会社に勤務している唯奈さん(32歳)です。コロナで2年ぶりに帰省をし、母(60歳)の様子が変っていたことで、私たちに相談してくださいました。母が男性とハートマーク付きのLINEをしていた画面を見て、浮気に気付いたそう。唯奈さんの父(66歳)は、家事が全くできず、調査の目的は両親の離婚阻止です。

【それまでの経緯は前編で】

母の誕生日に調査をスタート

唯奈さんの両親は、結婚33年の夫婦です。父はかつて浮気をしたり短期の家出をしていたとのことで、家族に対して関心がない性格だと拝察。当然、母の誕生日などを祝うわけもなく、母に恋人がいるならば、その浮気相手と誕生日を祝うはずだと確信し、調査に入りました。

相談から2週間後の雨の日に、探偵カーで張り込みを開始。他府県ナンバーは目立つために、レンタカーを手配しました。唯奈さんの実家は庭付きの一戸建てで、現在も経営者として辣腕を振るっている父の経済力が伺えます。

朝8時に父がクルマで出勤。唯奈さんに似ている、大柄でガッチリとした体型の男性です。

それから1時間30分後に、家の前に他府県ナンバーの真っ白なドイツ車が停まりました。その直後、ナチュラルファッションに身を包み、グレイヘアをアップスタイルにした唯奈さんの母が出てきました。すらりとしたモデル体型で、マスクをしておらず、その輝くばかりの美貌が伺えます。

車は高速道路に入り、2時間程度を走り、ショッピングモールへ。車を止めると、母と同世代であろう男性が出てきました。ゆるっとしたシルエットのパンツと、黒いジャケットを羽織り、メガネは有名ブランドのものです。髪は少々さみしい感じがしますが、男性としての魅力を漂わせています。

男性と母はマスクをして、手をカップルつなぎしながら、高級ブランドを見て回ります。母が手にとるものを「僕が買うよ。今日はプレゼントしたい」と言いますが、母は「いいのよ」と言う。

男性の買い物に母が付き合い、ショップカードを書くときに男性の名前を特定。検索をします。この男性は60代前半、建築業界で活躍しており事務所も構えている。ブログを見ると妻と3年前に死別しており、愛犬と2人暮らし。優秀な息子2人は孫もおり、友達も多いことがわかったのです。

2人は昼過ぎに、高級レストランに移動。私たちも絶対に予約が取れないとは思いながらも、電話をすると「お席の用意はできます」と言います。そこで私たちも中に潜入。会話が断片的に聞こえるというラッキーな席でした。

彼は唯奈さんの母と幼なじみで、ずっと好きだったこと。SNSで再会できたことが奇跡だと思っていること。そして「自分と結婚してくれる可能性はあるのか」などと聞いています。唯奈さんの母は「ありがとう」とかわしている。この男性に対して、遊び相手程度の認識をしている様子が伝わってきました。

それから1時間ほど経過すると、店内の奥から花火がついたケーキが登場。お店のスタッフとそこにいたお客さんとでバースデーソングを歌い、唯奈さんの母の誕生日を祝います。唯奈さんの母は一瞬、迷惑そうな顔をしてから、気を取り直したかのように「うれしい」と手を叩いていました。

【国道沿いのラブホテルに入って行った……次のページに続きます】

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