退職金には色々な種類の制度があります。退職一時金制度や退職年金制度、さらに具体的には「確定給付型年金」や「確定拠出年金」「中小企業退職金共済」など、さまざまな制度によって企業が従業員のために用意しています。その退職金の計算にはつねに「勤続年数」がかかわってきます。

なぜならば、退職金の本来の性質は、長年にわたる勤務による会社への貢献に対する感謝や慰労の意味合いであるからです。では、「勤続年数」によってどのように退職金の受給額に影響が及ぶかをみてみましょう。
 
100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来がわかりやすく解説します。

目次
退職金と勤続年数
勤続年数でどれくらい退職金は変わるのか?
勤続年数の数え方の注意点
まとめ

退職金と勤続年数

まずは、退職金の制度と計算方法のおさらいをここでしておきましょう。それぞれの制度において必ず「勤続年数」が関係していることが確認できます。
 
退職金の計算方法は企業が採用している制度によって異なりますが、代表的なものとして、「最終給与連動制」、「別テーブル制」、「勤続年数別定額制」、「ポイント制」の4つの方法があります。それぞれ、詳しくみていきましょう。

(1)最終給与連動制

最終給与連動制は、退職したときの基本給に対して、「勤続年数」や年齢・退職事由などを考慮して計算する方法です。一定の条件によって規定されている支給率を乗じた額が退職金として給付されます。通常、退職金の支給率は、「勤続年数が長いほど割合が高くなる」ように定められています。逆に「勤続年数」が短い場合や、自己都合による退職の場合は、支給率が低くなるよう設定されています。
 
【「最終給与連動制」の計算式の例】

退職金=退職時の基本給×支給率×退職事由係数

ここでは、「勤続年数」によって「支給率」が影響されています。

(2)別テーブル制

別テーブル制は、最終給与連動制の「最終基本給」の代わりに別の給与テーブルを定めて計算します。つまり、「勤続年数」や「職能資格」などによって実際の給与体系とは別の退職金計算用の給与テーブルを設定しておくことになります。そうしておくことで、経済状況の変化による物価上昇や賃上げが起きても、退職金が大きく変動しないように抑えることができる仕組みになっています。企業側からすると安定した退職給付制度です。
 
【「別テーブル制」の計算式の例】

退職金=別途テーブルに定められた給与×支給率×退職事由係数

ここでは、別途定められた「給与テーブル」自体が「勤続年数」ごとに定められているので、直接的に影響しています。

(3)勤続年数別定額制

勤続年数別定額制は、基本給とは完全に切り離して計算される方式です。まさに「勤続年数」によって一定の退職金を毎年積み立てていく仕組みであり、例えば、毎年20万円ずつ積み立てるという規定の場合、退職時の「勤続年数」をかけてその積立額の合計が計算されます。
 
【「勤続年数別定額制」の計算式の例】

退職金=積立額の合計×支給率×退職事由係数
 
ここでは「積立額の合計」自体が「勤続年数」×「年間積立額」によって計算されているので、ダイレクトに「勤続年数」が影響してきます。

(4)ポイント制

ポイント制も基本給と切り離して計算される方式です。企業が複数の評価項目により定められたポイントをもとに「毎年のポイント」を付与し、従業員が退職する時点での「累計ポイント」に基づいて退職金の計算をします。

【「ポイント制」の計算式の例】

退職金=累計ポイント×ポイント単価×支給率×退職事由係数

「累計ポイント」は1年ごとに付与されたポイントの合計ですので、ここでも「勤続年数」が関係しています。

勤続年数でどれくらい退職金は変わるのか?

 このように、色々な退職金制度を見渡してみれば、共通して退職金の計算には「勤続年数」が影響していて、「勤続年数」が長ければ長いほど支給金額が多くなるようになっています。キャリアアップのために転職するときには、そのタイミングで会社に何年勤務していたかによって支給額は異なりますので、気になるところだと思います。
 
では、「自己都合」退職の退職金の相場は「勤続年数」によってどれくらい異なってくるのでしょうか。厚生労働省中央労働委員会の「令和元年賃金事情等総合調査」によると、「自己都合」退職の勤続年数別のモデル退職金総額は以下の通りです。
 
「勤務年数」3年で32.8万円
「勤務年数」5年で63.4万円
「勤務年数」10年で186.1万円
「勤務年数」25年で1,280万円
「勤務年数」35年で2,368万円
注)大学卒、事務・技術労働者、総合職相当、自己都合退職による 

これを見ますと、「勤続年数」が長くなればなるほど、加速度的に退職金の額が増えていることがわかります。もし、短いサイクルで何度も転職を繰り返すような場合には、それぞれの会社での勤続年数が短くなりますから、自然と退職金も少なくなってしまうことは考慮しておく必要があるでしょう。

勤続年数の数え方の注意点

気をつけなければいけないことは、「勤続年数」が短くて、例えば3年に満たないような場合には退職金が支給されないという規定になっていることが多いということです。つまり、1、2年の短いタイミングでの転職では退職金を受け取ることは期待できないと考えておく必要があります。

また、「勤続年数」で気をつけることの一つに、途中における「休職期間」が長ければ退職金が減ってしまう可能性もあるということが挙げられます。病気や出産・育児などで長期休職した場合、その期間が退職金の計算上「勤続年数」に加算されないことがあるからです。「勤続年数」は退職金に大きく影響しますので、休職期間についての取り扱いについて休職前後に勤務先に確認しておくと良いでしょう。

まとめ

今回は「勤続年数」と退職金の関係をみてきました。定年退職の場合も、自己都合退職の場合も「勤続年数」が退職金の額を大きく左右することを再認識いただけたかと思います。いずれの場合においても、受け取った退職金をその後の生活において有効に活用するためには、将来のライフプランを作り、それに合わせてお金の使い道を考えることが大切です。

保険や金融商品を販売しない中立的なファイナンシャルプランナーは、相談者の立場に立って最適なライフプラン作りをお手伝いします。

●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)

株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
問い合わせ先:03-6403-5390(株式会社SMILELIFE project)

株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com

●編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB

 

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