退職金の制度や計算方法は会社によってさまざまです。皆さんの勤め先はどのような制度を採用されているかご存じですか?

退職金は老後の生活を支える大切な資金ですので、自分自身がいくらくらいの退職金をもらえるのかを知っておくことは重要ですね。まずは会社の退職金制度を知り、予想される退職金を前提にリタイア後のライフプランを作成していきましょう。

100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー 藤原未来が解説します。

目次
退職金を計算し、シミュレーションしてみましょう
退職金の計算方法
退職金の平均相場
退職金にかかる住民税と所得税を計算してみましょう
退職金と老後資金
まとめ

退職金を計算し、シミュレーションしてみましょう

退職金の計算方法は企業が採用している制度によって異なるので、どの方法を採用しているのかを知っておくことが大切です。

退職金の計算方法

退職金の計算方法の代表的なものとして、「最終給与連動制」、「別テーブル制」、「勤続年数別定額制」、「ポイント制」の4つの方法があります。それぞれ、詳しくみていきましょう。

(1)最終給与連動制

最終給与連動制は、退職したときの基本給に対して、勤続年数や年齢・退職事由などを考慮して計算する方法です。一定の条件によって規定されている支給率を乗じた額が退職金として給付されます。

通常、退職金の支給率は、勤続年数が長いほど割合が高くなるように定められています。逆に勤続年数が短い場合や、自己都合による退職の場合は、支給率が低くなるよう設定されています。

「最終給与連動制の計算式」
退職金=退職時の基本給×支給率×退職事由係数

計算式の基本給の部分が「退職時」に限定されているため、「退職をしたときの基本給」によって退職金が大きく違ってきます。例えば、営業職で、仕事の実績が直接基本給に反映するような給与体系の場合、若い時の基本給が70万円あったとしても、会社を退職するときの基本給が30万円になっていると、退職金の計算は退職時の30万円によって計算されます。

<シミュレーション例>
勤続年数:20年
支給率:10.0
自己都合退職:係数0.8
退職時の基本給:40万円

40万円×10.0×0.8=320万円

(2)別テーブル制

別テーブル制は、最終給与連動制の「最終基本給」の代わりに別の給与テーブルを定めて計算します。つまり、「勤続年数」や「職能資格」などによって実際の給与体系とは別の退職金計算用の給与テーブルを設定しておくことになります。

そうしておくことで、経済状況の変化による物価上昇や賃上げが起きても、退職金が大きく変動しないように抑えることができる仕組みになっています。企業側からすると安定した退職給付制度になります。

「別テーブル制の計算式」
退職金=別途テーブルに定められた給与×支給率×退職事由係数

<シミュレーション例>
勤続年数:25年
支給率:12.0
定年退職:係数1.0
別途テーブルに定められた給与:50万円

50万円×12.0×1.0=600万円

(3)勤続年数別定額制

勤続年数別定額制は、基本給とは完全に切り離して計算される方式です。単純に勤続年数によって一定の退職金を毎年積み立てていく仕組みであり、例えば、毎年20万円ずつ積み立てるという規定の場合、退職時の勤続年数をかけてその積立額の合計が計算されます。

「勤続年数別定額制の計算式」
退職金=積立額の合計×支給率×退職事由係数

<シミュレーション例>
勤続年数:35年
自己都合退職:係数0.8
毎年の積立額:20万円

20万円×35年×0.8=560万円

(4)ポイント制

ポイント制も基本給と切り離して計算される方式です。企業が複数の評価項目により定められたポイントをもとに毎年のポイントを付与し、従業員が退職する時点での累計ポイントに基づいて退職金の計算をします。

「ポイント制の計算式」
退職金=累計ポイント×ポイント単価×支給率×退職事由係数

累計ポイントは1年ごとに付与されたポイントの合計です。退職金の支給額はこの累計ポイントにポイント単価を乗じて計算します。ポイントが付与される値は、評価項目(職能、役職、勤続年数、年齢その他)によります。ポイント単価は、全従業員に共通して決められるのが一般的です。企業は経済情勢の変化などにより、退職金の水準を変更したい場合は、単価を変更するだけで調整することができます。

<シミュレーション例>
勤続年数:20年
支給率:10.0
自己都合退職:係数0.8
退職時の累計ポイント:80ポイント
ポイント単価:1万円

80ポイント×1万円×10.0×0.8=640万円

退職金の平均相場

では、退職金は相場としてどのくらい受け取れるものなのでしょうか。退職金は、企業規模や職種、業種のほか、勤続年数、学歴、さらには退職金制度などによって金額が異なります。ここでは、大企業、中小企業、公務員の退職金の平均金額を比較しました。

「大企業の退職金相場」
厚生労働省(中央労働委員会)が公表した「賃金事情等総合調査(令和元年)」の「企業規模別の平均退職金額」によると、「資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上」の「大企業」の退職金は以下の通りです。

大学卒 2,289万5,000円
高校卒 1,858万9,000円

「中小企業の退職金相場」
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」の「従業員数が10人から299人の企業」の「中小企業」の退職金は以下の通りです。

大学卒 1,118万9,000円
高校卒 1,031万4,000円

「国家公務員の退職金相場」
ここでは、常勤職員と、常勤職員のうち「行政職俸給表(一)」が適用される職員が定年退職まで勤務した場合の相場は以下の通りです。

常勤職員:2,090万6,000円
うち行政職俸給表(一)適用者:2,140万8,000円

※「行政職俸給表(一)適用者」とは、常勤職員のうち一般行政事務職員などのこと。

「地方公務員の退職金相場」
地方公務員が60歳で定年退職した場合の退職金相場をみてみましょう。

〇都道府県
全職種 約2,211万円
うち一般職員 約2,160万円
うち教務公務員 約2,237万円
うち警察職 約2,202万円

〇指定都市
全職種 約2,163万円
うち一般職員 約2,107万円
うち教務公務員 約2,243万円

〇市区町村
全職種 約2,016万円
うち一般職員 約2,016万円
うち教務公務員 約2,147万円

退職金にかかる住民税と所得税を計算してみましょう

退職金には、「所得税」と「住民税」がかかります。それぞれの計算方法について紹介します。

<「所得税」の計算>

退職金は、他の所得とは分離して計算されます(分離課税)。なお、退職金を受給する際、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、原則として確定申告は必要ありません。

「退職所得金額」は、原則として次のように計算します。
退職所得金額=(収入金額 - 退職所得控除額)× 1 / 2

「退職所得控除額」は、次のように計算します。
ア) 勤続年数が20年以下の場合
40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)

イ) 勤続年数が20年超の場合
800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

この「退職所得金額」に所定の所得税率を乗じ、控除額を差し引いて算出された金額が所得税です。

<「住民税」の計算>

「住民税」の計算は、「退職所得金額」に住民税率を乗じて計算します。住民税率は、課税退職所得金額に関わらず、一律10%(都道府県民税4%、市区町村税6%)で計算式は以下のとおりです。

住民税 = 退職所得金額 × 住民税率10%

ちなみに、「退職所得金額」は所得税の場合と同じです。所得税の計算のところで算出した金額を用いることができます。

退職金と老後資金

退職金は老後の生活を支える大切な資金です。受け取った退職金を効率よく活用しながらその後のリタイアメント生活を楽しみたいものです。

最近、大切な退職金をうかつにもリスクのある投資商品に全額つぎ込んでしまって大きく減らしてしまったというような残念な事例を耳にすることがあります。そのような誤った選択をしないように資産運用をするときは慎重に検討する必要があります。

退職金の一部を資産運用に回すこと自体は誤りではありません。長生きが当たり前の時代には資産運用は必要であると考えるべきでしょう。

ただし、気をつけなければいけないのは自分の「投資可能額」を把握したうえで、その額の範囲内で投資をするということが大原則であるということです。一般的には向こう10年の間に使う予定の旅行費用とか自宅のリフォーム代、そして年金では不足する生活費の取り崩し額を合計した金額をよけた後に残る資金の範囲(=投資可能額)のなかで資産運用をするべきだと言われます。

まとめ

退職金は老後の生活のための大切な財源になります。まずは自分の退職金の計算方法を知り、およそいくらの退職金が見込めるのかを把握してみましょう。

リタイアメント生活を豊かに楽しく暮らすためには、早めにライフプランを作ることをお勧めします。商品販売をしない中立的なファイナンシャルプランナーは相談者の立場に立って最適なリタイアメントプラン作りをお手伝いします。 

●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)

株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
問い合わせ先:03-6403-5390(株式会社SMILELIFE project)

株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com

●編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB

 

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