オルゴール、尺八…高周波の音は耳鳴りの予防になる【聴くだけで耳鳴り・難聴が改善する方法】２

「耳鳴り」「難聴」は症状もさまざまなうえ、原因がわかりづらく、治りにくい病とされています。また、コロナ禍におけるマスク生活で、マスクがフィルターのようになり会話が聞き取りにくくなっており、耳の聞こえにくさに不安を感じている人が増えています。

そこで、国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科の教授・中川雅文先生の『聴くだけで耳鳴り・難聴を治せる本！』（宝島社）から、耳のメカニズムや、耳鳴りの予防法をご紹介します。

監修／中川雅文

完全な無音の環境はむしろ耳にとっては毒

自然界にはまったくの無音は存在していません。例えばアマゾンのジャングルの中には、100キロヘルツまで音があります。しんと静まり返った森の中や、満天の星が煌めく人気のない高原の静寂の中でも、人間の耳では聞くことができない高周波の音が存在しているのです。

生命にとって、音があることのほうが自然なことであり、耳にとっても完全な無音の状態では、有毛細胞が代謝することをやめて、機能を停止してしまいます。その状態が続くと、アポトーシスといって、有毛細胞は自らの生命活動をやめてしまいます。まったく音のない静か過ぎる環境は、むしろ耳にとっては毒なのです。

一般的に20キロヘルツ以上の音は「超音波」と呼ばれています。イルカやコウモリなどは、超音波でも聞き取る能力があるといわれていますが、人間には超音波は聞き取ることができません。しかし、耳から音として認識していなくても、20キロヘルツ以上の高い音を、光や色として脳や体は感じています。ちなみに、20ヘルツ以下の低周波は、皮膚感覚（体性感覚）で感じ取っています。

普段感じられない高周波は耳にとっての栄養になる

意味のある音として感じていなくても、さまざまな周波数の音を感じることは、耳にとってもとてもいいことです。身の回りでそういったさまざまな周波数を感じることができるのは大自然の中。現代生活では大自然の中に行くことが減り、一定の範囲の周波数にしか触れる機会がありません。人口密集地では道路や鉄道が近接し、工業音、産業音などの騒音の洪水で、耳はかなり疲弊し、触れる機会のない周波数の音に飢えた状態になっています。

特に、普段、感じることができない高周波の音を意識的に聞くようにすると、それは耳に対しての栄養になり、耳鳴りの予防にもなります。また、ガムランやチェンバロ、尺八など高周波を含む音が出る楽器の演奏を生で聴けるコンサートがあれば、積極的に参加してみましょう。

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TJMOOK『聴くだけで耳鳴り・難聴を治せる本！』 監修 中川雅文
宝島社

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中川雅文（なかがわ・まさふみ）
国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科 教授・医学博士。1986年順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部講師、私学事業団東京臨海病院耳鼻咽喉科部長、順天堂大学医学部客員准教授を経て、現職。（一社）日本メイクリスニングセーフ協会理事、（一社）日本ニューロマーケティング協会代表理事。耳とコミュニケーション研究の第一人者としてテレビなどのメディアでも活躍。聴覚障害者の支援に関わる啓蒙や教育活動にも積極的に取り組む。著書に『「聞こえにくい」がなおる耳トレ』（大和書房）、『「耳の不調」が脳までダメにする』（講談社）。