孤独死が怖いのと、友達が欲しかった
好子さんは友達が少ないという。
「後輩から慕われているし、先輩からもかわいがられているとは思うけれど、“何でも話せる友達”というのは少ないかも。あと、夫と別居していることをバレないようにしていたので、ご近所さんもいなければ、いわゆる“ママ友”が少ないんです」
そこで、目を付けたのがソーシャルアパートメントだ。これは、風呂トイレ付きの個室にそれぞれが住んでいる。しかし、キッチンやリビングが共用という施設で、都心近郊に広まっている。シェアハウスに比べて割高だが、プライバシーが保たれている施設が多く、運営会社が管理しており住人トラブルが少ないと言われている。
「貸し出しているマンションにもすぐに人が入ったし、その家賃で賄えるのでいいかなと。一緒に住む人々も年齢層が高く、私のようにバツイチの女性も多いと聞いて、今住んでいるところに決めたのです。いい関係を築いてお互いに助け合って暮らせたらいいと。それは孤独死が怖いということもありました」
もしかすると娘は海外に行ってしまうかもしれない。そんな時に母親である自分が娘の自由を阻んではいけないと思ったこともあった。
「実家はありますが、弟夫妻が両親の面倒を見ているし、姪も甥も地元から離れない。頼れる身内がいないこともあります。そこで意気揚々とソーシャルアパートメントに入ったんです。最初は楽しかったんですよ」
新住人は、皆が集まる日時に自己紹介する。
「離婚して住むことになったことや、娘がいることなど3分程度挨拶をしたんです。なんとなく空気が変わったことを感じましたが、特に気にしませんでした」
住人はSNSを通じて連絡を取り合う。しかし、好子さんはそのアプリを入れていなかった。
「個人情報を抜かれそうで怖かったので、メールにしてほしいと言いました」
それをカバーしてくれたのが、道代さん(58歳)だ。病院勤務だと言っていた。SNSに連絡が入ると、ショートメッセージで好子さんに転送してくれた。そうするうちに、友情のようなものが育まれ、食事をする機会も増えて行ったという。
【疎外感を感じるようになっていく……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。