コロナ禍による自粛生活は徐々に開放されつつある一方で、新たな変異株への懸念も無視することはできません。これまでにない生活の変化を体験したコロナ2年目の今、多くの支持を集めた商品には、どんな傾向がみられるのでしょうか。
株式会社インテージ(https://www.intage.co.jp/)が、日用消費財を対象にした「2021年、売れたものランキング」を発表しました。人々に受け入れられる商品からは、時代が求める要素が浮かび上がってくるものです。ぜひご参考にしてください。
1位は女性購入率が2年前の約10倍に!
1位となったのは「オートミール」で、今年を象徴する商品となりました。欧米では一般的でも、日本では定着していない印象があった「オートミール」。長引くコロナ禍の影響で健康志向が高まったことから、多くの人の購入に繋がりました。
食物繊維・ビタミン・ミネラルなどの栄養素が豊富で低カロリーなのが好評で、ダイエットや美容への効果が期待できるものです。米のように主食として食べる「米化」といわれる食事法が紹介され、これまでの牛乳で煮るというオーソドックスな使い方だけでなく、ハンバーグに混ぜて使うほか、デザートに使うなどの幅広い利用方法が支持されています。
特に健康や美容に敏感な女性の購入率では、2年前の約10倍にまで数字が伸びる驚異的な結果となっています。さらに年代別では、情報感度の高い15-29歳の購入率が2020年に大きく伸び、2021年になると幅広いメディアで取り上げられ、中高年層まで広がりました。
2位の「麦芽飲料」は貧血予防や体力増強などがSNSで話題になり、品薄がニュースにもなりました。そのほか、美容やダイエットを期待できるとして、女性を中心に人気だった4位の「プロテイン粉末」もヒットしました。両商品とも、コロナ前の2019年に比べて市場規模は約2倍となり、店舗などで目にする機会が格段に増えてきました。13位「栄養バランス食品」でも、プロテインバーがとりわけ好調です。
さらに健康食品・飲料で注目されるのは、8位「ノンアルコール飲料」です。家でお酒を飲む機会が増える中、健康に気を使う層に受け入れられたようです。11位「ビール(発泡酒・新ジャンルを除く)」も、前年10月の酒税法改正による値下げ効果があったほか、糖質ゼロ系の好調が見て取れました。
玩具メーカー菓子は『鬼滅の刃』が牽引
昨年から好調が続く3位の「玩具メーカー菓子」は、今年も『鬼滅の刃』などの複数のコンテンツが力強いこともあり、好調を持続しました。
また、くせ毛対策や仕上がりへの効果が期待できる商品などが好調の6位「ヘアトリートメント」や、10位「血圧計」など、家でのセルフケア関連商品もランクインして、以前より外出が難しくなったことから生まれた需要を取り込みました。
そんな中で注目されるのは、5位「しわ取り剤」です。美容品ではなく、衣類のしわを取るものですが、昨年より外出機会が増えたことに加え、除菌効果をうたったものが新しく発売され、ランクインしました。
そして7位の解熱鎮痛剤は、新型コロナウイルス、ワクチン接種時の副反応対策として需要が高まりました。今年の5月から65歳以上の高齢者へのワクチン接種が優先して進められたことから、この年代による購入金額が伸びています。
旅行用品に回復の兆し、家で楽しめる商品はいまだに好調
昨年の行動変容を象徴する商品のひとつが、めまいなどの症状を抑える薬である「鎮暈剤(ちんうんざい)」です。酔い止めも含むこのカテゴリーは、旅行ができないことから、昨年はコロナ前の約半分にまで落ち込みました。今年は14位で回復する傾向が見られています。2019年に比べればまだ6割程度ですが、プラスに転じたことは人々の行動変化の表れといえるでしょう。2021年10月に緊急事態宣言が解除された後、販売の伸びが見られています。
15位の「テーピング」も、外での運動機会が前年よりも増えた影響と推察されます。同じく花粉症用としても使用される「鼻炎治療剤」は12位。昨年に比べて花粉が多かったこともありますが、外出の機会が増えていることも要因として挙げられます。
ランク外とはなりますが、医薬品同様に昨年落ち込んだ化粧品にも変化が見られました。目の周りの化粧で用いられる「眉目料」が21位、化粧を落とすときに使われる「クレンジング」が22位と伸長。これらもコロナ前の水準までは回復していないものの、下げ止まりの兆しが見られました。
一方で9位「冷凍水産」は、ご家庭で様々な料理にアレンジして使用できる手軽さや、保存のしやすさなどが好評で、2019年に比べると大きく市場規模を伸ばしています。
ランク外ではありますが、17位「入浴剤」、23位「園芸用品」などの、家にいる時間を楽しめる商品は昨年に続き好調で、市場もコロナ前の約2割増となっています。
ランキングから消えた衛生系商品について
コロナ時代の必需品となった衛生系商品。2020年と2019年を比べると上位に入っていたマスク、殺菌消毒剤、体温計、うがい薬などが今年は姿を消しました。ただし、コロナ前の2019年と比べて2020年には4倍以上の売り上げとなったマスクは、今も人々の生活の必需品です。その他の商品も同様に、コロナ前に比べれば爆発的に伸びており、昨年の売上とは変化がないだけで、Withコロナ時代には欠かせないものといえます。
また昨年のランキングを見ると、ホットケーキを焼く際に活躍するプレミックス粉や、ホイップクリームなど、お家でのお菓子作りの材料などについても、コロナ前の水準を上回っています。
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コロナの影響で生活が激変した2020年。その影響を引きずりつつも、2021年は新たなトレンドが見られました。一方で自粛生活による行動変容を受け、引き続き苦戦が続くものや、昨年の売り上げが大きく伸長したことからの反動があったものもあります。
今後の消費生活からは、どんな世相が反映されるのでしょうか。引き続き注目していきたいものです。
調査概要
データ:SRI+®(全国小売店パネル調査)
集計期間:2021年1-10月、2020年1-10月
指標:販売金額の前年同期比、2021年対2019年比(1-10月)
対象:食品・飲料・日用雑貨品などのインテージ標準カテゴリー