世界に先駆け高齢化が進む日本では、高齢者の数は年々増加傾向にあり、65歳以上の高齢者は総人口の5人に1人という時代に突入しました。また、それに伴い認知症患者数も2015年には65歳以上の7人に1人であったものが、2025年には5人に1人になると予想されており、その数は700万人超といわれています。

政府としても認知症に対する政策の確立は急務であり、閣僚会議においてまとまった「認知症施策推進大綱」をみると、これからの時代は認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続ける「共生」と、通いの場の拡大として「予防」の取り組みを進めることで、社会と認知症患者との共存を可能にすることが重要であるとしています。

そこで今回は、相続の生前対策を行う日本クレアス税理士法人の税理士 中川義敬が、家族信託作成のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、認知症対策として期待されている「家族信託」の概要と費用についてお話しします。

目次
家族信託とは
家族信託の仕組み
家族信託の費用
家族信託に関する税金
まとめ

家族信託とは

家族信託とは、被後見人が判断能力のある段階で、財産権に関する意思決定権を他の人に移し、第三者に渡してもらったり、自身に還してもらったりする制度のことです。 わかりやすく基本形の登場人物を説明すると、次のようになります。

委託者…現時点で財産を所有している人。家族信託は、委託者の意思決定を助けることを目的としています。
受託者…委託者の財産を管理する立場。
受益者…委託者の財産を管理したことにより生じた利益を受け取る人。

通常の財産管理と異なるのは、家族信託は委託者の持つ財産の委託権を受益者に移す、という「法律による保護」という点です。家族信託は認知症の対策としても期待されています。認知症になる前に信託契約を行うことでスムーズな相続が可能になります。

家族信託の仕組み

まず、「委託者」である父や祖父等と「受託者」である子や孫等が書面で信託契約を締結します。親や祖父母が信頼できる子や孫に自身の財産(不動産や現金預金等)を預けて、その財産の管理や処分を任せます。なお、その財産から出た利益は親のものとなります。この時、親や祖父母が委託者(財産管理を委託する人)、子や孫が受託者(財産管理を受託する人)。さらに、受益者(財産管理による利益を受ける人)は親や祖父母にあたります。

管理運営は受託者である子や孫が行いますが、税法上の所有者は受益者である親や祖父母となります。従って、不動産等については名義を変更するものの、贈与とは異なり、実質の所有者は受益者である親の財産、ということになります。実際の現場で多く行われているのが、受託者に「信託管理人」を定める方法。司法書士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に依頼してアドバイザー役になってもらいます。つまり、受託者に「プロの眼」をつける、ということ。信頼できる監督人は、受託者が知識を持たない場合のフォローにもなります。

家族信託の費用

信託契約書には、様々な専門的知識が必要となる事項が書き込まれることになります。したがって、家族信託を始めようとする場合には専門家に依頼することをお勧めしますが、自分で行う場合と専門家に依頼する場合に分けて費用をご説明いたします。

自分で行う場合

信託財産の中に不動産がある場合、信託登記と所有権移転登記をする必要があります。信託登記をする時、不動産価格の1,000分の4を乗じた金額を登録免許税として納付する必要があります。不動産価格は固定資産税評価額が基準となります(固定資産税評価額は、不動産の所在地の自治体の「固定資産課税台帳」で確認することが可能です。また、毎年一回送られてくる固定資産税納税通知書にも記載されています)。

したがって、不動産の評価額が高ければ高いほど、または不動産の数が多ければ多いほど登録免許税は高くなります。加えて、信託契約書を公正証書として作成する場合には、公証役場の手数料が3万円から5万円程度かかります。

専門家に依頼する場合

家族信託を、専門家に依頼する場合には上記に加えて信託契約書の作成料がかかります。信託財産の管理・運用についての方法や、信託契約が終了した際の財産の帰属などを信託契約書に盛り込みます。信託契約書には、これら以外にも様々な専門的知識が必要となる事項が盛り込まれます。その内容を決めるのは自由ですが、決めるためには経験・知識が豊富なコンサルタントのアドバイスが必要となるでしょう。

また、専門家に依頼した場合にかかる信託契約書の作成料は、信託する財産の価額によって変動します。目安としては信託財産の価額の1%程度を考えておくと良いでしょう。

家族信託に関する税金

家族信託をすることによって課税される税金の一つに、贈与税があります。贈与税は、無償で財産の移転があった場合に、財産を受け取った人に課税される税金。年間で110万円を超える贈与があった場合は、その超えた部分の金額に税率を乗じて計算されます。ただし、委託者と受益者が同一人物である場合には、信託財産の所有権は受託者に移転していても、税務上は移転していないとみなされるため、贈与税は課税されません。

家族信託で贈与税が発生するのは、受益者と委託者が別の人物であり、信託財産の所有権が委託者から受益者に移転したとみなされる場合です。この場合には、信託契約を締結した時に贈与があったものとして、贈与税が課税されます。また、信託している期間中に発生した収益に対しては、所得税が課税されます。その所得税の納税義務者は、実際に収益を得ている受益者となります。

まとめ

家族信託は節税面において有効というよりも、委託者の財産を守る意味合いと、俯瞰的に見られる人物を受託者とすることで、相続を「争族」にしない、という特徴があるといえるでしょう。それだけに受託者を誰にするのかはとても重要です。今後、「争族」の対策として、家族信託は増えていくのではないかと予想します。家族信託に詳しい弁護士、税理士、司法書士、FPなどの専門家も増えていくことでしょう。

2015年1月に相続税が改正され、基礎控除の減少で相続は更に「身近なもの」になりました。引き続き家族信託のメリットを利用した、「争族」回避に期待したいものです。

構成・編集/内藤知夏・松田慶子(京都メディアライン ・http://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。
個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

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