「孤独死」とは、主に一人暮らしの者が誰にも看取られることなく、当人の住居内などで生活中の突発的な疾病などによって死亡することで、病が重篤化しても助けを呼べず、死亡している状況を表します。
「孤独死」は、日本で高齢化が問題化した1970年代にマスコミによって作られた造語です。実は、1995年の阪神・淡路大震災後から特に使用されるようになりました。
様々な解釈が存在していて、合意された明確な定義があるわけではありません。なお、欧米にはもともと孤独死という概念は存在しないので、日本の孤独死に関する報道記事は「kodokushi」のようにローマ字で表記されることが通例となっているようです。
さらに2000年頃からは日常の社会問題として孤独死問題が頻繁に取り上げられるようになりました。
孤独死の定義
先述しましたが、「孤独死」とは地域社会から孤立した人が、医師や家族など、周囲の誰にも看取られずに死亡すること。
3つの特徴があります。
1:適切な治療や食事などを施されていれば助かった可能性がある
2:死後自宅などで長期にわたって発見されない
3:地方よりも地域社会との関係が希薄な都市部で多い
核家族化の進展に伴い1970年代から孤独死ということばはありましたが、2000年代以降、日本社会の高齢化、地域コミュニティの崩壊、長引く不況による離職・失業者増、高齢者に対する社会保障制度の不備などが重なり、増加しているとみられます。
孤独死と孤立死の違い
いわゆる「孤立死」や「孤独死」という表現がマスコミ等で用いられている例が多くありますが、これらについての明確な定義はありません。 一般的に「孤独死」とは、普段は家族や地域住民、見守り関係者などとの交流がある中でも、自宅などで疾病等により一人で亡くなった場合に使われるケースが多いでしょう。
一方、「孤立死」は、普段から周囲との交流がなく、社会や地域から孤立している状況の中で、自宅などで誰にも看取られず一人で亡くなり、死後、長期間放置されていた場合に使われるケースが多いといわれています。
孤独死の死因
ここでは、孤独死の死因について厚生労働省の統計をもとに解説していきます。
厚生労働省の統計
日本の全体統計で、一般的な死因上位5位は
・20歳~39歳で自殺、不慮の事故、がん、心疾患、脳血管疾患。
・40歳~89歳でがん、心疾患、脳血管疾患、肺炎、不慮の事故、自殺です。
(統計:厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)
40代前半までは死因の上位に自殺が入っていることも特徴的ですが、基本的には病死であることが統計上からも読み取れます。では、孤独死の場合はどうでしょうか。
孤独死という言葉には法的定義がないため正確な統計値がないのが現状です。そのため、「立会人のいない死亡者数」で代用している統計を参考にするケースが多いです。
「孤独死」の方の死因は、賃貸住居を対象にしたデータですと、平均死亡年齢が61歳で、6割が「病死」とされています。また、お亡くなりになってから発見まで日数が経過しているなどの理由から死因が特定できない死亡者数については、約2,200名(2019年統計)確認されています。
地域で比較してみますと、死因が分からない孤独死の方が人口あたりで多くいるのは東京・大阪などの都会が目立ち、北陸4県や高知、和歌山などの地方では少なくなっています。この人数推移としては、1995年から2015年にかけて孤独死は7.5倍となっており、同じ期間、高齢化社会で死亡者数が1.4倍となっている中でも際立って多い印象があります。
行政の取り組み
家族関係や地域との関係性の希薄化による「孤立」が原因の孤独死は、増加の一途をたどっています。ここでは、行政の取り組みについてご紹介しましょう。
孤独死の割合の低い地域の取り組み
孤独死の割合が低い地域、福井県では、「黄色いハンカチ運動」を実施しています。特筆すべきは、高齢者に限らず、集落内の全世帯で実施している活動であるという点で、とても効果を発揮していると思われます。
活動の内容は、朝起きて異常がなければ黄色いハンカチを玄関先に掲げ、夕方になったら片づけるというものです。それを、老人会の役員で編成された見回り隊がハンカチの状態からその住人の安否を確認することで、早期発見を可能にしています。
民間事業者とのタイアップによる見守り体制
また、上記のような老人会組織による体制以外に、民間事業者と連携した見守りの強化をしている自治体も多くあります。
たとえば、雪深い地域では燃料配達業者などの事業者が「地域見守り隊」を編成し、異変を察知したら地域包括支援センターへ連絡する取り組みがあります。
また、降雪が必要な時期限定の冬季限定住居を整備している自治体もあります。(北海道の市町村)
支援する自治体は基本的に市町村単位が多く、県全体での取り組みはまだまだ少数
配達事業者、水道のメーターを確認する事業者と協力し、水道の使用量が激しく増減しているもしくは昼夜問わずカーテンがしまっているなどの異変を感じたら決まった窓口へ連絡する体制のある自治体もあります。(群馬県)
人口あたりの孤独死に課題を感じている兵庫県では、地域安心見守りネットワークの構築と称し、通報するまでの仕組みづくりだけでなく、通報後の対応についても体制整備を進めています。
栄養バランスの取れた食事を定期的に配食するサービス、緊急通報システム
岡山県加賀郡吉備中央町では、画期的なサービスが安価で受けられます。65歳以上の一人暮らし、70歳以上の高齢者世帯、一人暮らしの重度障がい者を対象に、月500円で緊急通報システムを利用でき、24時間365日相談が可能で看護師等専門スタッフが対応してくれるものもあります。
配食サービスでは低栄養状態や調理が困難な特定高齢者を想定し、栄養バランスを考えた食事を1食400円で配達し、あわせて安否確認が取れるというものも希望者へ提供しています。(岡山県加賀郡吉備中央町)
まとめ
上記のように、多くの自治体で対策はしているものの、いまだ孤独死の数は増加傾向です。お一人様世帯は減少しているどころか増加の一途。そうであるにも関わらず、自治体の施策は、どうしても「一人になってしまった後の対策」に偏っており、「孤独状態」を回避する絶対的な対策にはまだまだ程遠いと感じます。高齢になってから始める対策というよりも、50代など、早めに対策を講じることの必要性を感じます。
成年後見を請け負っている筆者としては、ご相談やセミナーの時に必ずお伝えしていることがあります。それは「なんでも相談できる仲間をつくりましょう」ということ。
たとえば、ネット社会が進んでいる現代は、SNSの流行で、気軽に連絡する方法があります。LINEやフェイスブックなどのツールを活用し、何かしらの「異変」に気づいてもらえるような方法についてあらかじめ仲間内で決めておけば、一つの対策となるでしょう。
仲間作りやSNSに苦手意識や抵抗感のある方もいらっしゃるかと思います。そういう方は、我々のような専門家(任意後見制度・司法書士)へご相談いただき、定期的な見守り契約などを結んで備えておくという方法もあります。
コロナ禍、長期にわたる外出自粛で閉じこもりがちになりますが、様々な便利な技術を活用した「孤独」対策を検討してみてはいかがでしょうか。
●取材協力/坂西 涼(さかにし りょう)
司法書士法人おおさか法務事務所 後見信託センター長/司法書士
東京・大阪を中心に、シニア向けに成年後見や家族信託、遺言などの法務を軸とした財産管理業務専門チームを結成するリーガルファームの、成年後見部門の役員司法書士。
「法人で後見人を務める」という長期に安定したサポートの提唱を草分け的存在としてスタート、
全国でも類をみない延べ450名以上の認知症関連のサポート実績がある。認知症の方々のリアルな生活と、多業種連携による社会的支援のニーズを、様々な機会で発信している。日経相続・事業承継セミナー、介護医療業界向けの研修会など、講師も多く担当。
司法書士法人おおさか法務事務所(http://olao.jp)
●構成/内藤知夏(京都メディアライン・http://kyotomedialine.com)