子どもの発達障害は『個性と捉えて尊重したい(34.5%)』『良かったと感じることもある(23.9%)』

近年、発達障害の早期発見・早期支援が非常に重要視されるようになってきました。

さまざまな理由や背景がありますが、中でも「二次障害」が起きてしまう可能性が、その大きな理由と言われています。

※二次障害:発達障害の特性により本人に過剰なストレスがかかることやトラウマが引き金となり、不登校や引きこもり、問題行動、対人関係の困難といった二次的な問題が発生すること。

また、問題を放置することで、うつ病やパーソナリティ障害等の精神疾患などに繋がってしまうこと。

発達障害は生まれつき見られる脳の働き方の違いによる特性ですが、子どもが生きづらさを感じたり、養育者(親)が育児の悩みを抱えたりすることも珍しくはありません。

では、実際に発達障害のある子どもを持つ親は、どのような療育を行っており、また、発達障害の支援に対してどのような課題を抱えているのでしょうか。

そこで今回、療育・児童発達支援スクール『コペル+(コペルプラス)』(https://copelplus.copel.co.jp/)を運営する株式会社コペル(https://copel.co.jp/)は、発達障害のある小学生以下の子どもを療育に通わせている保護者を対象に、「発達障害のある子どもとの向き合い方」に関する調査を実施しました。

発達障害への“気づき”

はじめに、子どもの発達障害への“気づき”について伺っていきたいと思います。

「子どもが“もしかしたら発達障害かも”と思ったきっかけを教えてください」と質問したところ、『言葉の発達に遅れを感じた(35.3%)』と回答した方が最も多く、次いで『こだわりが強いと感じた(14.6%)』『集団行動からはみ出すことがあった(12.6%)』『健診(検診)で指摘された(9.5%)』『保育園・幼稚園等で指摘された(7.8%)』と続きました。

言葉の発達の遅れやこだわりの強さなど、子どもの日常の言動から気づいた方が多いようです。
発達障害への気づきは、周囲の大人が感じた違和感をそのままにしないことが大切なのかもしれません。

また、健診や保育園からの指摘により、未就学児のうちに発達障害と分かることもあるようですが、発達障害の子どもは、6歳までの療育が重要と言われています。
では、そのことをご存知の親の割合はどれくらいなのでしょうか。

そこで、「6歳までの療育が重要であることをご存知でしたか?」と質問したところ、7割以上の方が『はい(74.98%)』と回答しました。

多くの親が、6歳までの療育が重要であることを把握されているようです。

療育は発達障害を抱える子どもに必要不可欠ですから、早期に取り組むことが大切です。
心身の成長が著しい幼児期から適切に対応することで、二次障害を防ぐことができるとも言われています。

“気づき”から相談までのハードル

先程の調査で、発達障害への気づきは周囲の大人の違和感がきっかけだということ、早期発見と療育の開始が重要であると感じている方が多くいらっしゃることが分かりました。
では、発達障害の可能性に気づいてから、実際に療育を始めるまでにどれくらいの期間を要したのでしょうか。

そこで、「“もしかしたら発達障害かも”と思ってから実際に療育を始めるまでに要した期間を教えてください」と質問したところ、『3か月~6か月未満(26.3%)』と回答した方が最も多く、次いで『1か月~3か月未満(20.2%)』『6か月~1年未満(18.9%)』『1年~2年未満(12.8%)』『1か月未満(11.2%)』『2年以上(10.6%)』と続きました。

発達障害の可能性に気づいて以降、1か月~1年の間で療育を開始している方が多いようです。

では、療育を開始するまでにはどのようなステップを踏まれたのでしょうか。

続いて、「どのようなステップを踏んで療育開始に至りましたか?(複数回答可)」と質問したところ、『自治体の発達相談窓口への相談(35.7%)』と回答した方が最も多く、次いで『地域の療育センターへの相談(31.3%)』『発達障害専門外来のある医療機関の受診(30.2%)』と続きました。

自治体や地域の専門機関での相談や受診を踏んで療育を開始された方が多いようです。
また、療育開始までに大変だったことを伺ったところ、以下のような回答が寄せられました。

■療育開始に至るまでに大変だったこととは?
・どこに通うのが良いのか調べるのが大変だった(30代/女性)
・療育そのものの知識がなく手探りでの開始だったので、情報収集が大変だった(30代/女性)
・どこに問い合わせていいのか分からず、人にも相談しにくくて困った(30代/男性)
・本人にとって療育は望ましいことだと感じたが、父親、母親の気持ちの整理がつくまでが大変だった(30代/男性)
・周囲の理解が得られない。自責の念にかられる(40代/男性)
・診療の予約がなかなか取れなくて発達検査に行くのと検査結果を教えてもらえるまでに時間がかかった(40代/女性)

療育を開始するまでには様々な苦労や困難が立ちはだかる様子が伺えます。

療育施設で重視する点と支援後の子どもの変化

ここまでの調査で、療育を始める前の段階、発達障害への“気づき”や、実際に療育を開始するまでに大変だったことなどが見えてきました。
ここからは、実際に療育を開始してからについて伺っていきたいと思います。

検討段階では複数の療育施設が候補に挙がっていたと思いますが、どのようなことがポイントとなり、現在の療育施設を選択されたのでしょうか。

そこで、「現在の療育施設に決めたポイントを教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『支援プログラムの内容(37.3%)』と回答した方が最も多く、次いで『療育の方針(33.3%)』『自宅からのアクセス(33.1%)』『子どもがなじめるか(30.6%)』『先生の質(29.8%)』『施設の充実度(23.3%)』と続きました。

学校の授業のように指導内容が統一されているわけではないので、発達を促すプログラムを実施しているかの見極めや、送迎や何かあったときに駆け付けられるかといった立地条件、通う子どもがなじめるかといった点を重視して選択した方が多いようです。

では、実際に療育を始められて、子どもにどのような変化が見られたのでしょうか。

そこで、「療育に通い始めてから子どもはどのように変わりましたか?(複数回答可)」と質問したところ、『苦手だったことに取り組めるようになってきた(32.9%)』と回答した方が最も多く、次いで『言葉の発達が見られた(32.1%)』『集団行動ができるようになってきた(29.6%)』『日常生活での困り感が減った(25.4%)』『得意なことがさらに伸びた(21.4%)』『自発的に物事に取り組めるようになってきた(21.3%)』『特に変わっていない(13.2%)』と続きました。
子どもに合った療育施設で過ごすことにより、苦手だったことができるようになったり、言葉の発達が見られたりと、大きな変化を実感している親も多いようです。

では、療育を開始したことによって、親はどのような変化があったのでしょうか。

そこで、「療育に通い始めてから保護者さまはどのように変わりましたか?具体的に教えてください」と質問したところ、以下のような回答が寄せられました。

■療育に通い始めてからの保護者さまの変化とは?
・子どもの特性がわかったのでイライラしなくなった(30代/女性)
・言葉のかけ方や、困った時の接し方がわかってきた。我が子に振り回されることが減り、自分の非認知能力を高める必要があったことがわかった(30代/女性)
・子どもの行動一つひとつを理解し、尊重しようと心掛けるようになった(30代/男性)
・自宅でもどのようにサポートしたらよいのかを、相談できるようになり、困り感が大きく減りました(40代/女性)
・子どもの成長を楽しめる様になった。療育への理解が高まった(40代/男性)

子どもの障害について理解することで、心にゆとりが持てるようになった親が多いようです。

発達障害はポジティブな面もある

療育を受けることで、発達障害を抱える子どもにとっても親にとっても良い変化をもたらしている様子が分かりましたが、当初は不安や戸惑いも少なからずあったと思います。
では、子どもが発達障害と診断を受け、どのように感じていらっしゃるのでしょうか。

そこで、「子どもが発達障害と診断されてどのように感じていますか?」と質問したところ、『個性と捉えて尊重したい(34.5%)』と回答した方が最も多く、次いで『良かったと感じることもある(23.9%)』『不安な気持ちが強い(18.7%)』『それまでと特に変わらない(16.9%)』『なかなか受け入れられない(6.0%)』と回答しました。

行動面や情緒面の特徴を否定するのではなく、“個性”と捉えて尊重したいという親が多いようです。
また、『良かったと感じることもある』という方も少なくないことが分かりました。

■発達障害と診断を受けて良かったと感じる点とは?
・周りの子と明らかに違うと感じる点が多い中、診断されたことでこの子はこういう子なんだと周りの子どもと比べなくなりました(20代/女性)
・診断が下りてなかった時に比べて診断が下りてからの方が接しやすくなりました(30代/女性)
・周りの人、実家の家族になど、説明する時に診断名があった方が説明しやすい(30代/女性)
・前向きになれた(30代/男性)
・将来に希望が見えてきた(40代/男性)

周囲のお子さんと異なる特徴を持つからこそ、個性と捉えてその部分を大きく伸ばすことも可能です。
発達障害という診断を受けたことによって、前を向いて進めるようになった親も多いのかもしれません。

発達障害のある子どもとの向き合い方

今回の調査で、発達障害の子どもを持つ親の苦労などが見えてきました。

周囲の大人が感じている違和感をそのままにせず、発達障害への“気づき”として重要視することが、早い段階での療育にも繋がりますが、そのためには、発達障害に関する情報を取り入れ、「気づく目」を養う必要があります。

療育は発達障害を抱える子どもに必要不可欠です。
心身の成長が著しい幼児期から適切に対応することで、いわゆる二次障害を防ぐことができますから、早期発見・早期支援が非常に重要と言えます。
そのために親ができることは、その子の個性を見極め、どのような支援が必要かを考えることです。
適切な教育や支援を続けることで社会生活での困難を減らし、子どもの自己肯定感も高まります。

一方で、早期発見・早期支援にはまだまだ課題も多いのが現状です。
乳幼児健診で発達障害の早期発見に取り組んでいる自治体は約80%ですが、発達障害の可能性があった場合のフォローとして、発達を促すプログラムを実施していると回答した自治体は25%程度というデータもあり、経過観察を何か月も続け、子どもの変化を実感できない状態で過ごすという例が少なくありません。

また、福祉制度に則った民間の療育施設を紹介されるケースもあり、支援内容にはばらつきがあることなどから、社会全体で課題を解決していく必要があります。

発達障害の特性は、“個性”として前向きに捉えることもできます。
実際、適切な支援をしてあげると定型発達の子ども以上に力を発揮することもあり、大人になって自分の得意な分野で優れた能力を発揮している発達障害の方も多くいらっしゃいます。

苦手な部分に注目しそこだけ支援するのではなく、その子の特性を前向きに捉えながら、子どもの自己肯定感を高め、長所をもっと伸ばせるような支援を工夫していくことが、非常に重要なのです。

調査概要:「発達障害の子どもとの向き合い方」に関する調査
【調査期間】2021年5月13日(木)~2021年5月14日(金)
【調査方法】インターネット調査
【調査人数】1,015人
【調査対象】発達障害のある小学生以下の子どもを療育に通わせている保護者
【モニター提供元】ゼネラルリサーチ

 

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