取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「父親は、自分の母親よりも私よりも再婚相手を選んだ。祖母は二人と仲良くしてほしいと最後まで私に伝えてきましたが、今さらどうしようもできません」と語るのは、知佳さん(仮名・39歳)。彼女は4年前まで祖母と一緒に暮らしており、現在は一人暮らしをしています。知佳さんは母親のことは一度も見たことがないと語ります。

母親がいなくてもちっとも寂しくないくらい、父と祖母は愛してくれた

知佳さんは兵庫県出身で、父親と祖母との3人家族。物心がついた頃にはすでに母親はいなかったものの、一度も寂しいと思ったことはないと言い切ります。

「母親がいない理由を私は知りません。何度か父や祖母に聞いたことがあるんですが、濁されてしまうことが多くて、子供心ながらあまり聞いてはいけないことなのかなって。祖父は私が生まれる前に亡くなっていますが、母親はきっとどこかで生きているんだろうなとは思います。でも、昔も今も、会いたいとは思っていません。母親がいないことを不思議に思ったことはありましたが、寂しいと思ったことは一度もありませんでした。寂しさを感じさせないように、父も祖母も私のことをたくさんかわいがってくれましたから」

小さい頃は、車で30分ほどの距離にあった遊園地に行くのが大好きだったと振り返ります。

「車で30分ほどの距離のところに遊園地があって、よく3人で行っていたんです。私は絶叫系の乗り物が大好きで、いつも2人を連れ回していました。覚えているのは、身長が足りなくてずっと乗れなかったジェットコースターに乗れるようになったときに4回連続で乗ったこと。出口から入口までダッシュして、再び並ぶということを繰り返していたんです。今思うと、父親は今の私ぐらいの年齢で、相当きつかっただろうなって思います。でもケラケラと笑っていた父親の笑顔が記憶に残っていますね」

【父の再婚で祖母と離れて暮らさなければならないことに……。次ページに続きます】

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