母の恋人の存在を認められない私を諭したのは、父だった
結婚を機に初めて母親と離れ、1人で暮らす母親の様子も気になっていた亜紀さんは頻繁に連絡を取り合っていたとか。しかし、結婚から少し経ったときに実家に帰ると、母親は知らない男性と同居していたそう。
「びっくりですよね。まったく知らないおじさんが家のキッチンに居て、私にお茶を振る舞ってくれているんです。相手の様子からして、自分の存在を私が知っていると思っていそうで、誰なのかは聞けず。母親からこっそりと『もう1年くらい付き合っている男性で、あんたが出て行ってから一緒に暮らし始めた』と告げられました。私の実家はマンションの一室で、そこは父親も含めた私たち家族が昔から暮らしてきた場所です。一気に母親に対して嫌な気持ちになりました。その日は一緒に食事にも誘われたんですが、用事があると早々に引き上げましたね」
その後は母親と疎遠になってしまったと言います。
「すぐに姉に報告したんですが、姉は放っておけというだけ。今は同居だとしてもいずれ再婚したらどうしようと、とにかく嫌で嫌でたまりませんでした。姉に話しても気分が晴れずに、夫に相談したら当たり障りのない言葉ばかり……。私は母親に相手ができたことをどうしても父親に言えずに、夫にも言わないでとお願いしていました。だって自分が父親の立場だったらきっと嫌でしょうから。その後も母親から連絡はあったんですが、私は母親と会うことを避けるようになりました」
そのもやもやを解消してくれたのは夫と父親だったとのこと。
「母親とも距離を取ろうとしている私を見て、夫は父に言ってしまったんです。母親の今の状況を知った父親は、私に謝ってきました。『ずっと我慢をさせて、離婚を選ばせてしまったお父さんのせいだ』と。今の母親を応援してほしいとも言われました。子どもたちのために仲良くしようと母親はずっと歩み寄ってくれていたこと、娘のことを本当に大好きだったことを伝えられました」
すぐには無理だったそうですが、亜紀さんも子どもを産み、母親とも相手の男性とも程よい距離で付き合うことができていると言います。また、姉も子どもを産んだことと、亜紀さん夫婦がつないだことで父親と和解。今は両親別々ではあるものの「一緒に暮らしていた頃からみても今が一番うまくいっている」と笑顔で家族のことを話してくれました。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。