友人の主催した飲み会に彼女が来た

稲垣さんの過去の恋愛について伺うと、55歳の時に53歳の女性と恋愛関係になったことがあるという。相手は、大学の後輩だ。

「在学中は面識がなかったんだけれど、友人の主催した飲み会に彼女が来たんだよね。同じ学校というだけで話は盛り上るじゃない。それで、今度飲みに行きましょうと誘ったら、『はい、行きましょう』と。庶民的な女性だから、下手にいい店に行くよりは、ウチの大学の学生なら絶対に行っている居酒屋にしようと。そこを一次会にして、街をぶらぶらしてから、オーセンティックバーに行った。あれはすごく楽しかったな」

彼女は結婚しており、当時高校生の子供がいた。一緒に過ごす時間が取れないこと。そして、互いのパートナーに対する罪悪感から、自然消滅してしまう。

「大人が恋愛を続けるのは大変。圧倒的に時間がないし、1時間で食事して、1時間で2人の時間を過ごしてあわてて帰るという行為は、消耗するよ。あと、当時は今以上に不倫に対する風当たりが強かった。彼女は誰かに見られないか、常にビクビクしていて、そういうところに私もうんざりしてしまった。それに、お金もかかるしね」

大人になってからの恋は、そうそう転がっているものではないというのが、稲垣さんの持論だ。

「僕は少なくとも同世代の女性じゃないと恋愛対象にはならない。20歳も30歳も年下の女性が好きな男もいるけれど、共通の話ができなくては、恋愛をする意味がないよね。一方的に男がお金を出して、若さというエキスを手に入れるというのは、僕には向かない。となると、僕の場合は難しいよ。よく“女は灰になるまで”なんて言うけれど、欲望がなくなるのは女性のほうが早いと思う。それに、ステキな女性の多くは、家族といい関係を築いている。スキがないんだよね」

【そんな稲垣さんに数年前に現れた、妻公認の恋愛相手との関係は……? その2へ続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。

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