取材・文/沢木文

【最後の恋】63歳からの“恋活”は慎重第一。「金目当て」を排除し、運命の女性と会うまでの道のり~その1~

仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。

定年退職した3年後に、妻を乳がんで亡くす

今回、お話を伺ったのは篠原正一さん(仮名・65歳)。千葉県千葉市で生まれ育ち、国立大学に進学。幼いころからの教師の夢を実現し、関東地方の公立学校に勤務。校長として定年退職した3年後に、妻を乳がんで亡くす。娘から「彼女でも作ったら」と言われ、今までの人生を見直すことにしたという。

篠原さんに限らず、恋をしようとする65歳以上の男性の共通点は、スリムで若々しい。特に若作りをしている様子ではないのだが、世の中の流行を取り入れ、楽しく生活しているという印象を相手に与える人が多い。篠原さんは頭髪が寂しくなっているが、それを隠すことなく短髪にしており、特に髪も染めていない。

取材当日の篠原さんは、グレーのTシャツにジャケット、黒のデニムをはいていた。耳には白いコードレスイヤホンをさしており、筆者に気づくと軽く手を上げて、イヤホンを外した。

「退職してから、子供たちに昔の遊びを教えるなど、いろんな活動をしているから、けっこう忙しくてね。女房も教師をしていて、障がいがある人に向けての支援活動などもしていたから、そっちの活動もなんとなく引き受けてしまって、お金にはならないけれど、毎日が充実しているよ」

妻を亡くしてから、1年間は近くに住む娘2人が交代で家に来ていたという。

「“男やもめに蛆がわき、女やもめに花が咲く”って昔から言うでしょ。あの言葉通り女房が死んでから、台所がゴミだらけになってしまってね。家のことは何もできず、泣いてばかりいた。彼女が入院してから、自分で洗濯はしていたんだけど、葬式の後に乾燥機を開けたら、女房のパジャマと下着が出てきたことは応えた。今でも思い出すと涙が出ちゃうよ」

【妻の死後、娘から「彼女でも作ったら?」と言われて……。次ページに続きます】

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