取材・文/ふじのあやこ

家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、都内にある病院で受付の仕事をしている瞳さん(仮名・34歳)。神奈川県出身で、両親との3人家族。小さい頃から両親は離婚こそしていないものの別居状態で、母親と暮らす瞳さんが父親に会うのは月1回というペースになっていました。父親から連絡が瞳さんに直接来るようになってから、両親は連絡を取り合っている様子もなし。しかし瞳さんが大学生のときに母親との不仲を心配した父親が瞳さんを諭す場面があり、両親の仲が修復されていくことにうれしさを感じていたと当時を振り返ります。

「両親はずっと別居しているものの離婚はしていなくて、母親曰く『あなたが大人になるまで』別れないと決めていたみたいで、修復はないと思っていました。実際に仲良くしているところなんて見たことがなかったですから。それでも、連絡を取り合っていたこと、相談していたこと、離婚していないという事実にどこか期待しちゃっていたんです」

女の影で父親のことを気持ち悪いと思うように

両親が連絡を取り合っていることを知ってから、瞳さんは意識的に互いの親の話をしていったと言います。

「なんとなく別の親との話をするとされたほうは嫉妬みたいな感情を抱くのかなって勝手に思っていて、避けていました。でも両親が今も連絡を取り合っている、しかも私のことを相談しているという事実を知って、手探りながら父親には家での生活のこと、母親には父親とどこに行ったかなどをするようにしました。離婚していないという事実が、うまくいけば戻れるという希望だったのかもしれません」

そんな中、高校生のときに父親が勤めていた会社をやめて起業。少しずつ裕福になっていく父親にはお金のことも相談しやすかったとか。

「父親は広告関連の営業の仕事をしていて役職にもついていたようですが、独立してからはさらに稼ぐようになったのか、持ち物や家がわかりやすくいいものに変わっていきました。そんな父親の援助もあり私大に行かせてもらえて、その後もお金の面ではよく相談にのってもらいましたね。父は『お父さんは財布』と自虐を言ったりするようになっていて、私もそのノリで言いやすくて(苦笑)。母親とは顔を合わせばケンカするような時期だったので相談しなかったということもありますが、私のやることなすこと全部一度は反対されていたから、やりたいことを押し通す手段として父親を味方につけていたという感じでした」

しかし、父親の部屋で見つけた女の影から父親との関係が一気に張りつめたものになります。

「父親と会うときはどこかに出かけていたので家にはそんなに寄ることがなかったんですが、あの日は何か忘れ物をしたみたいで私を連れて一度家に戻りました。私は待っている間に何かいいものがあればもらおうと家の中を物色していると、チラチラと女物の化粧品や服が出てきて……。一気に父親のことが気持ち悪くなりました。別々に暮らしていてもまだ夫婦なのにこの人は何しているんだよって。このことに触れた後の父親の態度とかも想像すると気持ち悪くて、その日は見て見ぬフリをしました。そこからは何かと理由をつけて会うのを断ったり、用事がないと会わないようにしました。私は父親のことを冗談じゃなく『財布』だと思い込もうとしたんです。いないよりはいてくれたほうがまだマシというように」

【次ページに続きます】

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