取材・文/ふじのあやこ

家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、その時に感じた率直な思いを語ってもらう。

今回お話を伺ったのは、千枝さん(仮名・40歳)。都内にある不動産業を行う企業で契約社員として働いています。プライベートでは33歳の時に学生時代の友人と結婚して、現在は2人暮らしをしています。

家事をしてまで片づけに執着する父親。謝っている母親の姿を覚えている

千枝さんは埼玉県出身で、両親と2歳下に弟のいる4人家族。父親はサラリーマン、母親はパートとしてさまざまな仕事を転々としながら子育てを担っていたとのこと。覚えているのは家をキレイに保つことに厳しかったところだと言います。

「どのくらい小さい頃だったかは覚えていないんですけど、部屋を少しでも散らかしていると片づけなさいって常に怒られていました。そんなことはよくあることだと思うんですが、晩ご飯の前後で宿題をやっていたとしても、一度机を離れる時はある程度片づけないといけなくて。それに玄関には靴を置いてもいけなかったんです。脱いだ直後の靴って少し湿っているじゃないですか。その状態でも靴箱に入れないといけなくて、朝出す時に匂うこともあって……。それが嫌な記憶として残っています」

その几帳面さは母親というよりも父親のほうに強く出ていたそう。両親の仲はあまり良くなかったと当時を振り返ります。

「食事の時間も終わったらシンクの食器をすぐに母親は片づけていました。父親と一緒に食事をする時は一度で済むからいいんですが、それが別々でもその都度片づけるんです。私たちの食事後と、父親の食事後、それに父親の晩餐があれば夜だけで3度も。そんな中で、何度か父親が食器を洗うところを見かけたことがあって、それに気づいた母親は何度も父親に謝っていました。母親は父親に敬語で謝っていて、なんとなく違和感があったことを覚えているんです。他にも洗濯ものが積まれている状態になると父親が夜遅くに洗濯を始めることもありました。それにも謝りながら母親がその後を引き継いでいました。両親が2人でいる姿はそのぐらいしか記憶になくて。もちろん私たちが寝てから話していたのかもしれませんが、決して仲が良さそうには見えませんでした」

働きに出て、父親から追われるように家事を行う母親を千枝さんはいつからか手伝うように。その中で結婚の嫌な部分を聞くようになっていったとか。

「中学生や高校生の時ぐらいから洗濯物を畳んだり、食器を洗ったりするぐらいですが、母親のことを手伝うようになっていました。その中で母親はたまにボソッと一緒に働く独身の人の自由さが羨ましいと言うようになりました。『結婚はよく考えてからするべき』など、直接的ではなくて間接的に父親の悪口を言っているように聞こえましたね。でも、追われて片づけをする辛さは小さい頃から十分に感じていたので、母親の気持ちは理解できましたから」

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