日本三大和紙のひとつとされ、1000年以上の伝統を誇るのが、高知の土佐和紙です。その産地である、高知県いの町や土佐市には、「仁淀ブルー」とも称される清く澄んだ仁淀川が流れ、良質の和紙を生み出してきました。
水とともに和紙の原料となる楮(こうぞ)も、高知は日本有数の楮の産地。特に土佐の楮は繊維が太く長く、丈夫な紙を作りやすいといわれています。
名にし負う土佐和紙の中でも、世界でいちばん薄い和紙として知られるのが「土佐典具帖紙(てんぐじょうし)」です。「カゲロウの羽」とも呼ばれ、文化財の修復等にも欠かせないものとして、ボストン美術館所蔵の「浮世絵」や書籍の修復、システィーナ礼拝堂のミケランジェロが描いた大壁画の修復等、美術品、文化財の修復の材料としても使われる和紙です。
しかし、伝統工芸である土佐和紙も、時代の変化により、受け継ぐ人は減少傾向に。明治時代には県内で7000軒以上あった和紙の工房は、機械化や西洋紙の台頭などで、今では20軒ほどとなってしまいました。
いま、高知県が主体となって、伝統を受け継ぎ、伝統技術を守っていく取り組みが盛んに行われています。
そんな土佐和紙を受け継ぐ匠が、浜田洋直(ひろなお)さんと治(おさむ)さん兄弟。人間国宝だった祖父の幸雄(さぢお)さんから、極薄の「土佐典具帖紙」手漉き技術を受継ぐ4代目後継者です。
浜田さん兄弟は、「浜田兄弟和紙製作所/HAMADAWASHI」を立ち上げ、手漉き和紙の技術継承はもちろん、浜田家に伝わる様々な和紙技法を復刻・進展。土佐典具帖紙の新たな可能性を追求し続け、ちぎり絵などに使用する美術工芸紙や修復紙用の和紙を製作しています。
【浜田兄弟和紙製作所】
住所:高知県吾川郡いの町鹿敷1226
http://www.hamadawashi.com/
また高知県では県内産業の基盤を支え、古くから受け継がれてきた伝統技能の継承者を「土佐の匠」として認定しています。
土佐の匠の一人、オランダ人土佐和紙作家ロギール・アウテンボーガルトさんは、1980年に高知県旧伊野町で紙漉き修行を始め、2006年に高岡郡梼原町で紙漉き体験ができる宿泊施設「かみこや」をオープン。
「畑から和紙を育てる」をコンセプトに、無農薬・無肥料で自家栽培した原料の楮(こうぞ)や三椏(みつまた)で和紙を漉き、灯りやオブジェなどの作品作りにも力を入れています。
【かみこや】
住所:高知県高岡郡梼原町太田戸1678
http://kamikoya-washi.com/
まさに職人の技が紡ぐ和紙の歴史。現代ではアートや日用品など多岐にわたって、土佐和紙の魅力が生かされています。
そんな土佐和紙の産地、高知県いの町にある「いの町紙の博物館」では、紙の歴史や原料から土佐和紙ができるまでの工程をパネルや現物でわかりやすく展示されています。職人による伝統の技法「流し漉き」の実演や、色紙やはがきが作れる「紙漉き体験」ができるほか、絵画・版画・美術工芸用などの土佐和紙をはじめ、各種紙製品を購入することもできます。
【いの町紙の博物館】
■住所:高知県吾川郡いの町幸町110-1
■開館時間:9:00~17:00(紙漉き体験は16:00まで)
■休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
http://kamihaku.com/
取材・文/庄司真紀