文/池上信次(ジャズ「プロ・リスナー」への道連載中)
前回ご説明したように、サブスクは音楽の聴き方を変えました。しかし弱点もないわけではありません。それは、サブスクには演奏者、作詞作曲者、録音年などのクレジット(文字情報)がほとんど存在しないことです。表示されるのは、アーティスト名と曲名だけ。とくにジャズ・ファンならこの意味はすぐにおわかりいただけると思います。ポップス以外の音楽、とくにジャズやクラシックにおいてはどんなメンバーがいつどこで録音したのか、曲の作者は誰かという「情報」こそが、鑑賞において絶対不可欠なのです。ジャズCDに必ずライナーノーツが付いているのは、そのためですね。聴取可能楽曲数は6500万ですから、お気に入りの音楽とも膨大に遭遇、嬉しい新発見が多々あることでしょう。しかし、それに出会うたびにデータを調べるのは、かなり面倒です。
ならば、ライナーノーツ付きのプレイリストを作ってしまおう、と生まれたのが、電子書籍『プレイリスト・ウイズ・ライナーノーツ』シリーズです(発売は小学館スクウェア)。これはその名の通り、サブスクでの「情報不足」を完璧に補完します。20曲のプレイリストとライナーノーツが連動した電子書籍!!Spotify、Amazon Music、Apple Music、Google Play Musicの4つの「サブスク」プラットフォームに対応しており、誌面のリンクをクリックするだけでアクセス可能、スマホで音楽を聴きながら解説が読めるという画期的コンテンツなのです(いずれかのサブスクと要契約)。QRコードも付いていますので、PCで閲覧しながら、スマホで聴くなんてスタイルもできてしまいます。
創刊号はジャズの帝王、マイルス・デイヴィスの名曲を集めた『プレイリスト・ウィズ・ライナーノーツ001/マイルス・デイヴィス絶対名曲20』。選曲と解説執筆は本サイトで「ジャズを聴く技術」を連載中の池上信次。ベストセラーとなった『後藤雅洋監修・ジャズ100年』シリーズの編集経験を生かした、ジャズ初心者にもわかりやすく、マニアにもきっと新しい発見がある内容になっています。リストの1曲目は代表作の「TUTU」かと思えば、それは空目で「TOTO」との共演(1曲だけ存在する)だったり、CDボックスセットだけに収録されていた曲があったりと、1曲ずつ聴けるというサブスクの特徴を生かし、また現在の視点も重視し、いわゆる「歴史的名盤」に偏らない選曲になっています。
今後もビル・エヴァンスやハービー・ハンコック、ボサノバ等の続刊が予定されています。いきなり6500万曲の大海に飛び込む前に、まずはこの便利な電子書籍を使ってサブスク音楽体験を始めてみてはいかがでしょうか。あなたの音楽生活が、驚くほど素敵に進化します!
文/池上信次
フリーランス編集者・ライター。専門はジャズ。先般、電子書籍『プレイリスト・ウィズ・ライナーノーツ001/マイルス・デイヴィス絶対名曲20 』(小学館スクウェア/https://shogakukan-square.jp/studio/jazz/)を上梓した。編集者としては、『後藤雅洋著/一生モノのジャズ・ヴォーカル名盤500』(小学館新書)、『小川隆夫著/伝説のライヴ・イン・ジャパン』、『村井康司著/あなたの聴き方を変えるジャズ史』(ともにシンコーミュージックエンタテイメント)などを手がける。