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  1. ファストバックはリアのデザインが特徴的。セダンは伸びやかなデザインでありながら「塊感」があり、走る姿も美しいと想像させるものに仕上がっている。
  2. オリックス・リビング社長、森川悦明氏。「グッドタイム リビング センター南」にて撮影。

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「BMW2002」 過ぎ去った“彼女”と“あのときの想い出”をもう一度(横山剣のクルマコラム 第3回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。水曜日は「クルマ」をテーマに、CRAZY KEN BANDの横山剣さんが執筆します。

文/横山剣(CRAZY KEN BAND)

「東洋一のサウンドクリエイター」横山剣です。
今回は、不思議な「巡り合わせ」のお話しをしたいと思います。

1968年、小学校2年生のときに僕は腎炎にかかり、駒沢の国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)に入院したんです。ある日、見舞いに来た母親が買ってきてくれたのが、老舗ミニカーメーカーだったフランス ディンキー製の「BMW1500」。「ノイエクラッセ」(英語の「ニュークラス」の意)と呼ばれる、近代「BMW」のルーツとなるモデルです。

芋ようかん色の渋い4ドアサルーンでしたが、BMW独特のフロントグリルである、縦に2本並んだデザインの「キドニーグリル」がカッコいいと思いました。もちろん当時はそんな言葉は知りませんでしたが、考えてみればキドニーって腎臓なんですよね。妙な縁だったとも言えますが、それが僕とBMWのなれそめでした。

現在、レースの相棒である「BMW2002tii」1971年式のクルマをレース仕様にしています。出会えて本当によかったクルマです。

実車との出会いは20歳を過ぎた頃。当時僕が在籍していたクールスRCというバンドはツインボーカルで、もうひとりのボーカリストだった先輩の村山一海さん、通称ムラさんが「BMW2002tii」に乗っていたんです。

1966年に登場した「BMW1600-2」のコンパクトな2ドアサルーンボディに2リッターエンジンを積んだ、俗称「マルニ」こと「2002」。レースでも活躍した70年代を代表するスポーツサルーンの1台ですが、なかでも「2002tii」はクーゲルフィッシャー製インジェクションを備えたもっとも高性能なグレードでした。

で、ムラさんがその「マルニ」を運転させてくれたんですが、もう目からウロコでした。ボディがカッチリしていて剛性感がすごく高く、ハンドリングがすばらしい。コーナーで狙ったとおりのラインをトレースできる。加えてフロントガラスが広くて視界が抜群だから、首都高の車線変更なんかもストレスフリーに走ることができたのを覚えています。

その走りっぷりにすっかり心を奪われてしまったんですが、なんとムラさんがその「マルニ」を譲ってくれたんです。しかも数回残っているローンの残額を払ってくれればいいという好条件で。

ところが好事魔多しというか……。手元にくる直前に、僕はそれまで乗っていた、空冷フォルクスワーゲン専門店の「FLAT 4」でバッチリ仕上げた「VWタイプ3」のノッチバックでスピード違反をやらかしてしまい、違反点数の累積であえなく免許取り消しに。急いで海に向かっている途中のことでした。

季節は夏だったんですが、実際に取り消し処分が下される前に、たった一度だけ「マルニ」で海に行きました。エアコンなど付いていませんから、よけいに蒸し暑さが増幅された、けだるい夏の切ない別れとして、僕の胸に刻まれたんです。

その頃よく聞いていたアイズレー・ブラザースの『サマー・ブリーズ』なんかを耳にすると、今も苦い記憶が蘇ります。曲の中では夏のさわやかな風の中で男女の距離が縮まっていく予感がするのですが、僕と「マルニ」の生活はほんの数週間で終わりを迎えてしまったのでした……。

それからおよそ30年を経た6年前、BS日テレの番組『おぎやはぎの愛車遍歴 NO CAR,NO LIFE!』に出演した際に、もう一度乗りたい思い出のクルマを用意してくれるというので、「マルニ」をリクエストしたんです。

そうしたら、やってきたクルマがすばらしい状態で、思い出の美しさを差し引いても、実に魅力的な乗り味だったんです。それでまた欲しくなっちゃった、という話をたまたま知り合いのメカニック氏にしたところ、彼が昔レースで乗っていた「マルニ」があるから、それを仕立て直してくれるというんですよ。で、どうせならサーキット仕様にしてクラシックカーレースに出たら、というふうに話がトントン拍子で進んじゃって。

30年以上の時を経て、再び出会うことになった「マルニ」。今度は末永く付き合いたいので、どのような仕様で乗るべきかを真剣に考えました。そんなとき、思い浮かんだのが70年代後半に一大ブームとなった香港映画『Mr.BOO!(ミスター・ブー)』に出てくる、まっ黒な「マルニ」が何台も崖から落ちるシーンだったんです。その前から所有している「オースチン ヒーレー」も黒なので、ここは黒で揃えてみようと思い、「マルニ」もまっ黒に塗りました。

そんな想いの詰まった「マルニ」は昨年秋に筑波サーキットでレースデビュー、今年初めの鈴鹿を経て、5月の袖ケ浦フォレスト・レースウェイで、3戦目にしてようやく完走しました。

スプリントレースと2人で組む耐久レースに出てるんですが、後者のパートナーはなんと桑島正美さん。1970年代初頭に真っ黒の「フェアレディZ」を駆り国内レースで大暴れした後、単身ヨーロッパにわたってF1への登竜門であるF3やF2で活躍、「黒い稲妻」の異名をとったレジェンド・ドライバーです。

桑島さんとのツーショット。大先輩から学ぶことはたくさんあります!

桑島さんはクールスの先輩達の友人でしたから、10代の頃から面識はありました。とはいえ僕からすれば雲の上の存在だったトップドライバー。恐れ多くてとても言葉を交わすことなどできませんでした。それがどういうわけか、今ではペアを組んで同じクルマを走らせている。まさにヒトもクルマも巡り合わせ。いや〜、人生って何があるか、ホントにわからないもんですね。

横山剣(CRAZY KEN BAND)
1960年生まれ。横浜出身。81年にクールスR.C.のヴォーカリストとしてデビュー。その後さまざまなバンド遍歴を経て、97年にクレイジーケンバンドを発足。今年クレイジーケンバンドはデビュー20周年を迎え、8月1日(水)には3年ぶりとなるオリジナルアルバム「GOING TO A GO-GO」をリリース予定。9月24日(月・祝)には、横浜アリーナでデビュー20周年記念ライブも行われる。http://www.crazykenband.com

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