文・写真/杉﨑行恭
2018年2月14日、羽田空港の日本航空(JAL)格納庫でエアバス社の最新鋭旅客機「A350−1000」のデモフライト機が公開された。日本航空に2019年から導入が始まる、国際線向けの大型旅客機だ。長年アメリカ製機材を使ってきた日本航空にとっては、初めてのヨーロッパ製主力機材となる。
公開されたエアバスA350−1000は、同型機としては初のワールド・デモフライトとして飛来したもので、3機造られた飛行試験機の1機という。機体の53%をカーボン複合材で作られていることをアピールするため尾翼付近は網目状のラッピングが施され、胴体にはXWB(eXtra Wide Bodyの意)の文字が大書きされていた。
日本航空では、就航から20年を経たボーイング777の後継として、座席数325席のA350−900を18機、366席のA350−1000を13機導入する予定だ。
羽田空港のJALメインテナンスセンター2の巨大な格納庫で、現主力機ボーイング777と並んで置かれたA350は、さすがに大きかった。全長73.8m,幅64.75mは777とほぼ同等、「満席時のA350−1000は空席時の777よりも軽い」とエアバス社の広報が話していた。資料によれば40トンも軽いという。
実際にA350−1000を下から見上げると、ボーイング機に比べて官能的なまでにグラマラスな曲線のフラップ・トラック・フェアリング(翼の下の突起)が見える。これはA300の頃からエアバス機の特徴だ。複合材のせいか、機体全体もツルッとして金属っぽさが感じられない。
また翼端のウイングレットもハヤブサの翼端のようにカールしている。エアバス社はこれを「生物模倣」と呼んでいる。
そしてエンジン。このA350のために開発されたロールスロイス・トレントXWBエンジンは、まさしく金属の塊だ。9・3という高バイパス比(ターボファンによる噴流と燃焼ガス噴流の比)で、後ろから見るとコアエンジンのまわりに巨大なターボファンが風車のようにみえた。現代のターボファンエンジンは「ほとんどプロペラ機」と言われるゆえんだ。燃焼ガスをファン噴流で包み込むことで騒音を押さえ、高燃費を実現している。
機内に入ると天井が高いのに気がつく、デモフライト機はビジネス40席、エコノミープラス36席、エコノミー219席で、中央部にテスト飛行らしく計測用のマシンがどかんと据えられていた。
コクピットは15インチの液晶パネルが6面並び、大型機で初めてタッチスクリーン式になっていて「ベリー・エクスペンシブ・TVゲーム」と陽気な機長が説明してくれた。操縦はエアバス伝統のジョイスティック式で、隣には地上走行用のステアリングリングが並んでいる。
エアバス社はこのA350の−900と−1000の2タイプで、ライバルのボーイング787と777に対抗しようとしており、来年の2019年には1号機が納入される予定だ。その後、A350は日本航空のフラッグシップとして、少なくとも21世紀の半ば頃まで飛び続けることになるだろう。(ちなみに全日空はボーイング777を大幅に進化させたボーイング777xを後継機に採用するという)
日本航空の新たな立役者となる「A350−1000」。この飛行機で空へと旅立つ日が、今から待ち遠しい。
【エアバスA350−1000】
全長:73.78m
全幅:64.75m
高さ:17.08m
胴体幅:5.96m
座席数:366席(3クラス)
最大離陸重量:308t
航続距離:14724km
【エアバスA350−900】
全長:66.8m
全幅:64.75m
高さ:17.05m
胴体幅:5.96m
座席数:280席( 3クラス)
最大離陸重量:280t
航続距離:15001km
文・写真/杉﨑行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。