文・写真/杉﨑行恭
超低空の大型ジェットを真下から見る! その迫力と興奮は、実際に味わった者にしかわからない。そんな“アンダージェットスポット”の名所を目指して、大阪駅から阪急宝塚線に乗り込んだ。
曽根駅で下車。ここは豊中市の西側、駅前から大阪郊外の住宅街が続いている。そのなかの道を西に向かって歩くとやがて阪神高速道路が現れ、その下をくぐると町工場が集まるダウンタウンとなる。
駅から約1km、千里川という小川を渡ったところで大阪国際空港のフェンスにつきあたる。ここが通称「千里川土手」という関西屈指の“アンダージェット”スポットだ。
フェンス沿って歩くと、ALSと飛ばれる進入灯が滑走路の延長上に並んでいる、そのすぐ上を、突然現れた着陸直前のボーイング767が超低空で通過していった。
頭のすぐ上に車輪を出した巨大な旅客機が轟音とともに通過する。ジェット噴流が感じられるほどの近さ、「高度は15m、速度は時速200kmは出ているよ」とカメラを持ったお兄さんが教えてくれた。
地元では「伊丹空港」と呼ばれる大阪国際空港は、日本屈指の市街地空港なので滑走路の末端も一般道に近く、西風のときは大阪上空から超低空で突っ込んでくるのだ。
このため「たぶん日本一、旅客機に近い展望スポットですよ」という。
東の空を見ると着陸態勢に入った旅客機が点々と見える。車輪を出して着陸灯を光らせみるみる接近する機体は恐ろしいほどの迫力だ。
この千里川土手は自然発生的な展望スポットなので、特にベンチやトイレはなく、殺風景な川沿いだ。それでも夕方になると、六甲山系に沈む夕日を背景に離着陸する旅客機を眺められるという。
ちなみに着陸便は午前8時台から午後9時まで毎時10機以上もやってくる。
【千里川土手】
阪急宝塚線曽根駅から徒歩約15分
文・写真/杉﨑行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。