取材・文/小坂眞吾(サライ編集長)
レンズは単焦点に限る。そう決めたのは子供が生まれた頃だからもう20年以上前、コンタックスのG1とプラナー45mmを使い始めてからだ。その後、一眼レフのコンタックス(いわゆる「ヤシコン」)に乗り換えて、大きくて重い交換レンズが増えた。
デジタルになってもこのレンズ資産を活用したくて、マイクロフォーサーズ、APS-Cと、ボディを買い換えるたびにマウントアダプターを買い直した。
しかし、マイクロフォーサーズもAPS-Cも35ミリフォーマットに比べてイメージサークルが小さいから、レンズの周辺部分は結像せず、画角が狭くなってしまう。大枚はたいて(中古だけど)買ったディスタゴン18mmが、マイクロフォーサーズで撮影すると、36mm相当というありきたりのレンズになってしまうのだ。これでは面白くない。
それで1年前、ボディ3台とレンズ4本を売って、さらにお金を足して、35mmフルサイズフォーマットの「α7Ⅱ」を手に入れた。液晶ファインダーが見やすく、ボディ内手ぶれ補正が効くので、ピントがすこぶる合わせやすい。私の使うのはオートフォーカスが効かないレンズばかりだから、これがすごく快適なのだ。
おかげでフィルム時代に戻ったように撮影が楽しくなったのだが、楽しすぎて、α7ユーザーお約束の「オールドレンズ沼」にはまり、一度は減らしたレンズの本数が、リバウンドで前より増えてしまった。
レンズが増えたのはまあいいとして、どう生かすかが問題だ。
最近はプライベートな旅がほとんどできないので、撮影の機会といえばたまの出張か、犬の散歩くらい。そのたびにレンズを2本だけ選んで持っていくことにしているが、いざ撮影の段になると、もっと長いの持って来ればよかった、とか、中間の50mmが欲しい、とか後悔することになる。
あくまでも「ついで」の撮影だから、本格的なカメラバッグまでは必要ないが、小型ミラーレス機に特化したポーチのようなバッグでは役に立たない。交換レンズが数本入って、しかもカメラバッグっぽく見えないものが欲しい。
……というわけで、エレコムのカメラバックパック「“off toco”DGB-S038BK」を犬の散歩で試してみた。
■レンズ持ちにはうれしいカメラバッグ
“off toco”シリーズは、カメラ機材とその他の荷物を分ける2気室のバックパックで、カメラを入れない時は仕切りを開放して1気室で使える「2スタイル」が特徴だ。
その主なスペックは製品のホームページを見ていただくとして、ここでは個人的な使い勝手と感想を記しておく。
品番038はMサイズなので、大きさは街中でビジネスマンが背負うバックパックと変わらない。外側の布地はキャンバス地のようなざらっとした手触り。ハイグレードモデルにふさわしく、所有する喜びが味わえる。カラーは「ブラック」だが、真っ黒ではなく、つや消しのチャコールグレーといった感じで、タウンユースにもよく似合う。
2気室の下のほうがカメラ専用で、ここにすっぽり収まる緩衝材入りのケースが付属。このケースに機材一式を収納して下の気室に収めれば撮影準備完了だ。
このとき、ケース左右両側のジッパーを全開にしてフタを折り返し、機材が露出した状態で収納するのがコツ。収納したら、パック両側の開口部のジッパーを閉めてフタをする。こうすれば、パックのフタを開けるだけで機材にアクセスできる。
フタを開閉するジッパーはタテに2本あるのだが、つまみ同士をハンドルでつないであり、ハンドルを引くだけで2本のジッパーが同時に開き、フタが開く。ほぼ1アクションで、ストレスがない。
ケースには大小の仕切り板が5枚付属し、収納する機材に合わせて固定できる。
せっかくだから、重すぎて普段は絶対に持ち歩かないヤシコンのマクロプラナー100mm(実測739g)を入れてみる。他にペンタックスSMCタクマーの24mm、東独ツァイスの35mmと50mm。(Gプラナーから20年来の信者ゆえ、どうしてもツァイスが多くなる。)加えてα7Ⅱのボディと、M42マウントのアダプター。
仕切り板の位置が自由だから、これだけ入れても機材同士がぶつかって傷つく心配がない。ヤシコンマウントのアダプターだけはどうしても入らないので、上の気室の内ポケットに。機材の総重量は2.3kgを超える。
上の気室やポケットには、犬のウンチを入れるビニール袋、オシッコを流すペットボトルの水(500cc)、念のための財布、家の鍵、スマホ、この一連のレポートを撮影するための小型ミラーレス一眼等々。まだ余裕があるので、ヤシコンゾナーの180mm(実測827g)も突っ込んでおいた。
ボディをケースに入れず、首から下げる前提なら、このゾナー180mmもケースに収納できる。
さらに、今回は自撮りの必要があるので、三脚を付属のストラップでパック側面に固定。
パックの重さ(1485g)も含めると、7kg前後になる。今まででもっとも大げさな犬の散歩となった。
パックを背負ってみるとしかし、嘘のように軽い。背中に当たるパッドがよくできていて、背中のカーブに密着する。体とパックが一体で動くので、歩いていても体が左右に振られず、重さが気にならないのだ。
その昔、キャンプ道具と釣り道具一式を背負ってバックパッカーしていた私の、正直な感想である。
10分ほど歩いて川の土手でパックを下ろし、機材のケースを引っ張り出して撮影開始。いつもは広角から標準域までのレンズしか持ち歩かないが、今日は100mm、180mmがある。土手の花から野鳥まで、普段とは全く違う写真が撮れた。
買い集めたまま不良在庫化していたレンズも、これからは活躍してくれそうだ。
このバックパック、デジタル一眼用とのことだが、本来想定しているのはAPS-Cまでのコンパクトなデジ一と純正のズームレンズ数本だろう。今回のような、フルサイズフォーマットと単焦点レンズ多数、という使い方は想定外のはずだが、にもかかわらずこちらの期待にきちんと応えてくれた。
今回試用した「038」はMサイズなので、上の気室の容量は限られる。荷物をこれ一つとする場合、日帰り出張なら問題ないが、着替えが必要な泊りがけの出張は難しい。一回り大きなLサイズの「037」にするか、キャリーケースとの併用がおすすめだ。「038」は背中のパッドにストラップが渡してあり、キャリーケースの持ち手に通してストレスなく運ぶことができる。
取材・文/小坂眞吾(サライ編集長)
【プレゼントのお知らせ】
編集長の小坂が使ってみたのと同じ、エレコムの2STYLEカメラバックパック“off toco”(DGB-S038BK)を計3名様にプレゼントします。応募フォームはこちらです。(※締め切りは2018年2月26日まで。ご応募には「小学館ID」でのログインが必要となります)