選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
ミラノで1953年に生まれた指揮者リッカルド・シャイーが、アムステルダムやライプツィヒでの活躍を経て、いよいよ今年から故郷のイタリア・オペラの総本山、ミラノ・スカラ座音楽監督となった。『スカラ座の序曲・前奏曲・間奏曲集』は、スカラ座の長い歴史において初演されたオペラからの管弦楽曲集である。
ベッリーニ『ノルマ』やプッチーニ『蝶々夫人』など有名作からも選ばれているが、知られざる作品も多く興味をそそられる。たとえば、ジョルダーノのオペラ『シベリア』から第2幕への前奏曲。その雰囲気だけでも、ヨーロッパ人たちにとってシベリアがどれほど恐ろしい最果ての地のイメージだったかが分かって面白い。
ピチピチと生きのいい魚が跳ねるような躍動感、これぞイタリアの魂と言いたくなるような熱い息吹。演奏も録音もいい。続くオペラ本体が、どうしても聴きたくなる。シャイーとスカラ座の今後が楽しみである。※試聴はこちらから
【今日の一枚】
『スカラ座の序曲・前奏曲・間奏曲集』
リッカルド・シャイー指揮 スカラ座フィル
2016年録音
発売/ユニバーサルミュージック
電話:045・330・7213
商品番号/UCCD-1453
販売価格/2800円
写真・文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2017年12月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。