「色絵 桐亀甲文 輪花皿」〔伊万里 江戸時代(17世紀末~18世紀初) 戸栗美術館蔵〕

取材・文/池田充枝

17世紀から作られるようになった「伊万里焼」は、佐賀県有田地方で産する磁器で、おもに有田焼と呼ばれますが、有田に近い伊万里の港から積み出されたために「伊万里焼」の別名がつきました。また長崎の出島からはヨーロッパにも数多く輸出され、王侯貴族に人気を博しました。

伊万里焼のなかでも江戸時代に作られたものを「古伊万里」といいます。染付や色絵、白磁、青磁などの種類があり、とくに色絵は、米のとぎ汁のような乳白色の濁手(にごしで)素地を用いる柿右衛門様式、金彩を施した古伊万里金襴手(こいまりきんらんで)様式などの様式が展開していきました。

そんな古伊万里の逸品を集めた展覧会が、東京・渋谷の戸栗美術館で開かれています(~2017年9月2日まで)。

本展では、伊万里焼の誕生と技術革新によって多様な作品が生まれた17世紀に焦点をあて、「かたち」や「素地の白」など15のテーマのもと個性豊かな約70点の作品を展示しています。

「色絵 菊花形皿」〔伊万里(古九谷様式) 江戸時代(17世紀中期) 戸栗美術館蔵〕

本展の見どころを、戸栗美術館ジェネラルマネージャー・学芸員の黒沢愛さんにうかがいました。

「伊万里焼に施される装飾は、多くの場合、純粋に器面を飾るためのもので、そのヴァリエーションが多岐に渡っていることに特徴があると言えます。

釉薬の色は白磁(透明釉)、青磁、瑠璃、銹とあり、絵具も染付の青に始まり、辰砂、上絵の赤、黒、緑、黄、青、紫、萌黄、浅葱、金、銀が使われました。

陰刻や陽刻を駆使して凹凸を表したり、板作りや土型によって円形以外に作ったりするのもお手の物。これらで作り出される文様は草花や動物、幾何学、人物、器物、山水と挙げればキリがありません。江戸時代の伊万里焼を通観すると、時代によって様式の流行り廃りはあるものの、装飾の多様さに驚かされるばかりです。

多様な伊万里焼がありますが、面白いのは「好みだ」と思うものが人それぞれ違うこと。しかし「好みでない」と通り過ぎてきたものの中に、魅力が隠れていることもあります。ひとたびそんな魅力に気付いてしまうと、それが自分にとっての「逸品」に感じられて仕方がなくなります。

そんな「逸品」がひとつふたつと増えていくことは、新しいものを受け入れる自分自身の感性の土壌が次々と広がっていくようで、楽しい体験であります。今回の展示は、そのような体験を皆様にお伝えできればと企画いたしました。ぜひ展示室で、皆様のお気に入りの「逸品」を探してみてください」

誕生と技術革新の息吹を感じる17世紀の古伊万里。ぜひ会場でお気に入りの逸品を見つけてください。

【今日の展覧会】
『17世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅰ―展』
■会期:2017年5月27日(土)~9月2日(土)
■会場:戸栗美術館
■住所:東京都渋谷区松濤1-11-3
http://www.toguri-museum.or.jp
■電話番号:03・3465・0070
■開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)、金曜のみ10時~20時(入館は19時30分まで)
■休館日:月曜(ただし7月17日は開館)、7月18日(火)

なお9月15日(金)~12月20日(水)には「18世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅱ―」展も開催されます。

取材・文/池田充枝

 

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