明治時代、輸出用美術工芸品として人気を博した七宝。並河靖之(なみかわ・やすゆき 1845-1927)は、そのなかでも繊細な有線七宝(金属の素地の上に金・銀・銅などの扁平な針金を輪郭線にそって貼りつけ、その中にガラス釉をかけて焼き付ける技法)により頂点を極めた七宝家です。
そんな超絶技巧による並河靖之の七宝作品が展観される展覧会が、東京都庭園美術館で開催されています。並河の初期から晩年の作品までを一堂に会して紹介する回顧展です。(4月9日まで)
本展の見どころを、東京都庭園美術館・学芸員の大木香奈さんにうかがいました。
「並河靖之は、明治時代に活躍した京都の七宝家です。近年、明治工芸ブームの流れの中で、並河の高度な“技巧”に着目した紹介がなされてきましたが、本展ではその背景にある並河の美意識や表現へのあくなき追求の姿勢に焦点を当てています。
例えば、《藤草花文花瓶》は、優美なフォルムの中で、形に沿うように非常に細かく配された藤花、葉と葉の隙間に込められた極彩色など、小さな花瓶の中に豊かで美しい世界が広がっています。特に、深く艶やかな黒の釉薬は並河が得意としたもので、これによってモチーフをより一層引き立たせることに成功しています。並河の繊細な感性と美意識の高さを感じさせる作品の一つです。
この規模で並河の作品がそろって紹介されるのは国内外含めて初めての機会となります。没後90周年を記念する本展、ぜひご堪能ください。」
世界を魅了した並河の技と美を、ぜひ会場でご堪能ください。
【並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑-透明な黒の感性】
■会期/2017年1月14日(土)~4月9日(日)
■会場/東京都庭園美術館
■住所/東京都港区白金台5-21-9
■電話番号/03・5777・8600(ハローダイヤル)
■料金/一般1100円(880)円 大学生(専修・各種専門学校含む)880(700)円 中・高校生・65歳以上550(440)円 ( )内は20名以上の団体料金 ※小学生以下及び都内在住在学の中学生は無料、身体障がい者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳・被爆者健康手帳所持者と介護者1名は無料
■開館時間/10時から18時まで、3月24日、25日、26日、4月1日、2日、7日、8日、9日は夜間開館20時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日/第2、第4水曜日(1月25日、2月8日、2月22日、3月8日、3月22日)
■アクセス/JR山手線目黒駅正面出口より徒歩約7分、都営地下鉄三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩約6分
取材・文/池田充枝
1989年「サライ」