信長(演・小栗旬)からお市(演・宮崎あおい)への土産として登場した小一郎(演・仲野太賀)と秀吉(演・池松壮亮)の「猿2匹」。(C)NHK

編集者A(以下A):『豊臣兄弟!』第12回です。秀吉(演・池松壮亮)が女郎屋で朝寝をしている場に、なんと信長(演・小栗旬)が現れます。あのような場に突然上司がやってきたらと思うと、背筋が凍る場面でした。その信長は、「大きな戦」だといって秀吉を連れ出します。いったい、どんな戦なのか、と思ったら、ちょっとびっくりな展開でした。信長が小谷城にいるお市(演・宮崎あおい)のために「猿2匹」をお土産として持参したというのです。なんと荒唐無稽なと、言いたいところですが、長持からふたりが飛び出た瞬間に、吹き出してしまいましたから、この場面には降参です。文句はいいません(笑)。

ライターI(以下I):「2匹の猿」を見たお市役の宮崎あおいさんが、素で笑っているような気がして、そこが私にとってツボでした。これって「大河史に刻まれる名場面」かも、って思いました。

A:冒頭の藤戸石の場面もそうですが、信長は何事にも「全力を賭している」という印象があります。お市を慰労するにも全力を尽くす。そんな場面のような気がします。後年の江戸城大奥でも「絵島生島事件」の際に、大奥女中「絵島」が当代きっての人気役者生島新五郎と密会するために長持に隠れて大奥まで運ばれたという話が江戸市中で噂されたといいます。

I:忍者のようでもありますね。一見、荒唐無稽な場面のようでいて、歴史談義のネタにはなるという場面でしょうか。

甲冑姿になったねねもいた

A:よく、「過去の大河ドラマは重厚だった」という議論があったりしますが、例えば、1981年の『おんな太閤記』では、墨俣城を守る藤吉郎秀吉(演・西田敏行)のもとに、百姓から武士になりたいという嘉助(演・せんだみつお)がはせ参じた回がありました。妹のあさひ(演・泉ピン子)の夫なのですが、あさひはそんなことは許せないと義姉のねね(演・佐久間良子)に談判して、連れだって墨俣城に乗り込んだのです。

I:あれま。

A:放映当時は、なんとも思わずに視聴していましたが、大人になってから再放送で見ると、「こんな危険な戦場にふつうは女房衆だけでいかない」と思ってしまいました。1992年の『信長 KING OF ZIPANGU』では、横山城を守る秀吉(演・仲村トオル)のもとに甲冑姿のねねが「弁当」を持参して、激励に訪れるという場面がありました。こちらは私自身成人していたので、ぶっ飛んだ記憶があります(笑)。

I:甲冑姿のねねを演じたのは中山美穂さんですよね。

A:そうです。今となっては甲冑姿の中山美穂さんが登場したレア回ということになるのでしょうか。『豊臣兄弟!』の「猿2匹」の場面を見て、「甲冑姿のねね」を思い出してしまったのですよ。

硬軟のバランスが絶妙

I:長持から「猿2匹」が飛び出す一方で、シリアスな雰囲気の場面もあったりします。

A:足利義昭(演・尾上右近)と明智光秀(演・要潤)のシーンは「三好と同じように織田のやり方に従えぬ者たちが続々と現れよう。そのときこそ、わしは将軍として道を示さねばならぬ。幕府が作る安寧の世のために」と義昭が語る硬派な場面で、引き込まれるやり取りも注目でした。こういう硬い場面ばっかりですと肩が凝りますし、かといってコミック的な場面ばかりだと白けてしまう。「硬軟のバランス」をどうとるか、というのは制作陣を悩ますところだと思います。私は今のところ、緩急が絶妙だなあと思っています。

I:一方で、信長が厠を間違えて、浅井と朝倉が密談している部屋に迷い込んでしまうという場面もありました。

A:この場に朝倉景鏡(演・池内万作)がいるというところがツボでした。ネタバレになるのでみなまで言いませんが、朝倉景鏡、要注目人物ですよ。

I:本当にこのころの信長、秀吉の周辺は話題満載、人物多すぎですよね。どの話題を選択するか、どの人物に照射するか、難しい選択ですよね。

A:確かに。制作陣のセンスが問われる日々はまだまだ続きますね。

お市の娘茶々を抱く秀吉。(C)NHK

※宮崎あおいの「崎」は正しくは「たつさき」。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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