濡れ手に粟餅という話
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I:さて、偽板に手を出していた鱗形屋孫兵衛(演・片岡愛之助)のもとに長谷川平蔵宣以(演・中村隼人)が取締りにやってきます。
A:この場面、別稿の中村隼人さんのインタビュー記事で詳報していますが、鱗形屋の店内での平蔵の佇まいが「仕事開始」のスイッチがオンになっての登場だと話題になっています。
I:吉原にやって来る時にはいつもこめかみから色っぽく垂らしている「シケ」と称される髪を、きちんとしまった後に仕事にとりかかっているんですよね。こういう場面、私好きです。何度でも見返したくなります(笑)。そして、取締り後の蔦重と平蔵のやり取りがまた熱いですね。心に沁みますね。蔦重は鱗形屋に調べが入るかもしれないことを黙っていました。そのことに対するうしろめたさを吐露するのと同時に、正直に鱗形屋が摘発されることを望んでいた気持ちもあったことを明かします。
A:ある程度年齢を刻んできた視聴者の中には、来し方を振り返った時に、いろいろと思うところがあるという方が多かった場面ではないでしょうか。自らの立身のために、なりふり構わず他人を追い落として恥じない人がいたこと、そういう人物のために追い落とされた人への同情などなど、いろいろな思いが去来する場面だったのではないでしょうか。
I:いずれにしても偽板に手を出した鱗形屋が負けですよね。
A:長谷川平蔵宣以は、「濡れ手で粟餅」と表現しました。この蔦重と平蔵のやり取りは、なんだか胸に沁み入りますね。今後の平蔵登場回に期待大ですね。
I:思えば、第1回の長谷川平蔵宣以はかなりやんちゃな感じでした。
A:平蔵の傍らには、『JINGI仁義』や『日本統一』などのVシネマでおなじみのベテラン俳優山口祥行さんが平蔵の相棒磯八として控えていましたからね。
I:この長谷川平蔵宣以の軌跡も振り返ってみたいという視聴者の皆さんに朗報です。2月15日(土)、16日(日)の深夜(0 時45分~)に『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第1回から第6回までを2夜にわたって一挙放送するそうです。
A:第6回でも「上がったり屋のカンカン坊主」「しめこの兎」、さらには蔦重と鱗形屋の「ありがた山のとんびからす!」「恐れ入谷の鬼子母神」という掛け合いなど、言葉遊びや地口が頻出しています。
I:江戸っ子には欠かせないといわれたこうした掛け合いがなぜ衰退したのか、ということは、専門家の先生を交えて今後、展開したいと思いますが、まずは一挙放送でおさらいしたいですね。
A:酒を飲みながらちょっと夜更かしでもしますかね(笑)。
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●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ べらぼう 蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
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