江戸時代後期の浮世絵師歌川国貞の『江戸名所百人美女』「四ツ谷」に描かれた猫。猫はとても身近な存在だった。(国立国会図書館蔵)

ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)第4回では吉原の忘八親父らが猫語を交えて会話をかわす場面が描かれました。こういう場面が登場すると、猫好きとしては萌えますね。

編集者A(以下A):昨年の『光る君へ』でも左大臣家の飼い猫が2匹も登場して、ニヤついてしまいました。『初めての大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」おもしろBOOK』の受け売りですが、江戸時代の「猫ブーム」についてかいつまんでおさらいしましょう。

猫も大事にされた生類憐みの令

わんこ大好き5代将軍徳川綱吉の時に「生類憐みの令」が発せられると、お犬様は人間以上に大事にされたといわれるが、他の動物も大事にされた(人間の捨て子などにも適用された)。猫も例外ではない。仕事で大きな荷物を運ぶ大八車をひいていた男性3人が、道にいた猫をひいて死なせてしまうという事件がおきた時には、その男性3人は逮捕されて牢屋に入れられたという。

猫の手も借りたい、猫に小判

商業が発展し、かつては高価で貴族などが飼っていた猫は庶民の間でも気軽に飼われるようになった。猫が身近な存在になると、猫に関することわざもたくさん生まれた。その数100以上! それだけ猫は生活に密着していたということだろう。

江戸時代の猫の鳴き声は「みゃう」だった?

大の猫好きで猫の位牌まで作ったことで知られる浮世絵師の歌川国芳(蔦重よりちょっと後の時代に活躍)が作ったのが、江戸と京都を結ぶ東海道五十三次をもじった「其まま地口 猫飼好五十三疋(みゃうかいこうごじゅうさんびき)」。この作品の読み方から、当時の猫の鳴き声は「みゃう」だったことがわかる。

猫神様に化け猫と、猫は大忙し

江戸時代には、『鍋島猫騒動』など、実際にあったお家騒動をモチーフに化け猫が大暴れする物語がたくさん作られ、歌舞伎などで演じられたり、草双紙や浮世絵として描かれたりして出回った。かと思えば、鼠から蚕を守る猫神様としてもあがめられた。今も北関東や福島などに猫神様を祀る祠や碑が多く残る。

黒猫は労咳と恋の病に効くといわれた

江戸時代には、黒猫が密かに人気を集めていたらしい。というのも、黒猫を飼えば重い病である労咳(肺結核)と、やはり重症である恋の病が治ると信じられていたから。ヨーロッパでは黒猫は魔女の使いとして嫌われた時代もあったけれど、日本では恋のキューピッドだったのかも。

I:『べらぼう』第4回では、白い猫も登場しました。前述のように、昨年の『光る君へ』では、小麻呂という猫が登場して、ニモという猫キャストが演じていたということがアナウンスされて、猫好き界隈では盛り上がりました。

A:その後登場したのが小鞠(演・ひげ)ですね。やっぱり猫は可愛いですもんね。

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ べらぼう 蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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