嫡男頼通の結婚問題
I:道長(演・柄本佑)の嫡男藤原頼通(演・渡邊圭祐)の正妻に具平(ともひら)親王の娘隆姫女王(演・田中日奈子)が候補にあげられました。
A:具平親王は、村上天皇の第七皇子。冷泉天皇、円融天皇(演・坂東巳之助)の異母弟になります。『光る君へ』を見て、「この時代のこと、もっと知りたい」と調べていくと、具平親王と藤原為時(演・岸谷五朗)の間に親交があったらしいなど、『光る君へ』劇中では描かれなかった人間関係が出てきたりして面白いかと思います。
I:劇中では描かれなかった人間関係でいうと、為時実兄の為頼も具平親王に伺候していてサロンが展開されていたようですね。
A:為時の家にはよく宣孝(演・佐々木蔵之介)が遊びに来ていましたが、為頼も為時一家を気にかけてよく立ち寄っていたそうですよ。本編では、まひろや惟規(演・高杉真宙)の異母弟も登場していませんから、誰が登場して、誰が登場していないのか、「もっと知りたい!」という観点から調べてみると「えー、そうだったの?」という関係や出来事にぶつかりますね。
I:『紫式部日記』には、式部の実家と具平親王の交流を知った道長が相談してきたという記述もありますから、裏の裏をいろいろと想像するのも面白かったりします。
なぜ明法博士が登場したのか?
I:さて、敦成親王の寝所の床下から呪符が発見されたという報が百舌彦(演・本多力)によってもたらされました。「捜査」の結果、円能なる僧侶が関与していたということで、拷問を受ける場面が描かれました。
A:現代的な感覚でいうと拷問によって得られた「供述」に信ぴょう性があるのかという問題になるかと思いますから、この拷問場面の挿入は意味深ですよね。
I:歴史的に有名な拷問というと新撰組が京都で、土方歳三らが古高俊太郎を拷問したという旧前川邸の東の蔵が現在もそのまま残されていて、一度取材に行ったことがあります。新撰組による古高への拷問の結果、池田屋事件が勃発するわけです。さて、そうした中で、明法博士に照会しようということになりました。意外にしっかり段階を踏んでいたんですね。
A:明法博士は『新訂 官職要解』(和田英松著/講談社学術文庫)によると「法律を教授する役である」とありますので、伊周(演・三浦翔平)らの罪状を法的にしっかり勘申するということなのでしょう。仮にでっちあげだとしても、ここまで手順を踏めば「誠」になるという裏の見方もできます。
I:確かに。安倍晴明(演・ユースケ・サンタマリア)存命中は、陰陽師である晴明を結果的にうまく利用する道長の姿がみられました。
A:『鎌倉殿の13人』でも「嘘も誠心誠意つけば誠になる」という昭和の自民党政治家の言葉をアレンジした台詞が登場しましたが、陰陽師や行政機関をうまく利用すれば、でっちあげも誠になってしまうのかもしれません。なんか、そんなことを思ったりしました。
【伊周が壊れる。次ページに続きます】