古代ローマ人の言語であるラテン語ですが、実は無意識に使っているのをご存知ですか? たとえば、私たちが日常的に使用しているアルファベットも、ラテン語を書くために古代ローマで生まれた文字で、2500年以上も使われて続けています。

X(旧Twitter)で人気のラテン語さんの初著書『世界はラテン語でできている』(SBクリエイティブ)では、世界史、政治、宗教、科学、現代、日本……、あらゆる方面に思いがけずひそんでいるラテン語の数々を解説していて、ラテン語の知識がゼロでも楽しく読めます。

ここでは誰かに話したくなるラテン語トリビアの一部をご紹介します。知らず知らずのうちにラテン語由来の言葉を使っていることに驚き、あらためてラテン語や古代ローマの影響力を感じることでしょう。

文/ラテン語さん

ティータイムに楽しむドリンクも!

ラテン語cappa「外套」は英語のcap「帽子、キャップ」の語源です。それだけでは終わりません。「カプチーノ(cappuccino)」の語源でもあります。

まず、cappaからイタリア語のcappuccio「頭巾(ずきん)」ができあがります。イタリアでは1525年、聖フランチェスコ会からとある修道会が分かれて創設されます。その修道会は、頭巾のついた茶色の修道服が特徴的なので、cappuccio「頭巾」から「カプチン修道会」と呼ばれました。後に、カプチン修道会の修道士(イタリア語でcappuccino)の茶色の頭巾に色が似ていることから、エスプレッソに泡状のミルクを加えた飲み物が「カプチーノ」と呼ばれるようになりました。「礼拝堂」から始まった語源の話が、やはりキリスト教を通じてカプチーノに行きつきました。本当に語源は、探ると面白いです。

近年、私たちを苦しめたあの感染症も!

健康を脅かす病気にまつわるラテン語について解説します。2020年以降、地球上の人間は「新型コロナウイルス」に悩まされるようになりました。ラテン語関係の人間としては複雑な思いなのですが、「コロナ」も「ウイルス」もラテン語が元です。

「コロナ」の方はウイルスの見た目が太陽のコロナに似ているからそう名付けられたものです。太陽のコロナの語源はラテン語のcorona「かんむり」で、これは英語のcrown「王冠」の語源でもあります。また、ラテン語で「小さい冠」はcorollaといい、車名の「カローラ」の元になっています。また「ウイルス」の方は、ラテン語のvirus「毒」が元です。古代ローマのラテン語の発音では、virusは「ウィールス」と言います。したがって、日本語の「ウイルス」は、たとえば英語のように「ヴァイラス」と発音するよりも語源であるラテン語の発音に近いのです。

「ワクチン(英語ではvaccine)」も、ラテン語のvaccinus「牝牛の」が元です。これは、エドワード・ジェンナーによって発明された世界初のワクチンである天然痘のワクチンが、牛の病気である牛痘(ラテン語でvariolae vaccinae「雌牛の天然痘」)にかからせるというものだったことに由来します。

コロナ以外でも病気にまつわる話題には、ラテン語由来のものが多くあります。一例は「インフルエンザ」で、これは英語のinfluence「影響」と語源が同じです。中世において、天体の影響が関係していると考えられた伝染病の発生がイタリアでinfluenzaと呼ばれ(語源はラテン語influentia「流入、影響」)、これが18世紀にインフルエンザがイタリアから広まった際に英語に入りました。

他に病気関係の語としては、英語で「検疫」を指すquarantineの語源も興味深いです。元はイタリア語のunaquarantina giorni「およそ40日間」です(quarantinaはさらにラテン語quadraginta「40」にさかのぼれます)。天然痘が大流行した大昔、ヴェネツィア共和国が国内に広がるのを防ぐために感染が疑われる船を40日間隔離させたことに由来します。

ラテン語は薬の名前の語源になることもあります。分かりやすいのは「フェミニーナ軟膏」で、ラテン語のfeminina「女性の」が元だと考えられます。その他には、酔い止めの「センパア」はsemper「常に」が語源であると思われます。歯磨き粉の「Ora2(オーラツー)」は、恐らく「口」を指すラテン語oraあるいは「口の」という形容詞oralisが元だと思われます。また、「ニベア」はあの白い色から「雪のように白い(nivea)」が元だと想像できます。他にも「デントヘルス」の「デント」はdens「歯」が思い浮かびます。また、胃腸薬に「ウルソ」という製品があり、ursus「熊」が元になっています。これは熊の胆汁から作られる薬の薬効を起源として開発された薬だからです。

また医学一般で言うと、英語のmedical「医療の」はラテン語のmedicus「医者」が語源になっています。ドクター(doctor)はラテン語では「教師」という意味です。その他にも偽薬を指す「プラシーボ(placebo)」は、ラテン語で「私は喜ばせるだろう」という意味です。また、薬局の看板でたまに目にするRに斜め線が入った記号は処方箋を表しており、元はラテン語の“recipe”「取れ」です。この「取れ」は薬を調合する人への指示で、「薬を調合するための材料を用意せよ」という意味合いです。「レシピ(recipe)」の元にもなっています。

*  *  *

世界はラテン語でできている
著/ラテン語さん
SBクリエイティブ 990円

ラテン語さん(らてんごさん)
ラテン語研究者。
栃木県生まれ。東京外国語大学外国語学部欧米第一課程英語専攻卒業。ラテン語・古典ギリシャ語の私塾である東京古典学舎の研究員。高校2年生でラテン語の学習を始め、2016年からX(旧Twitter)においてラテン語の魅力を毎日発信している(アカウント名:@latina_sama)。研究社のWEBマガジンLinguaにて隔月連載中(シリーズ名:名句の源泉を訪ねて)。ラテン語を読むだけでなく、広告やゲームなどに使われるラテン語の作成や翻訳も行っている。

 

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