中宮になって立后すると、今日でいう「皇族」に列することになる

A:ざっくりいうと、正式に中宮になって立后すると、お付きの役人が宛がわれ、今日でいう「皇族」に列することになります。さて、今週の劇中当時の状況ですが、太皇太后には第63代冷泉天皇の后昌子内親王(第61代朱雀天皇皇女)。皇太后には一条天皇生母・藤原詮子、皇后には第64代円融天皇の中宮藤原遵子(関白藤原頼忠の娘)がいました。天皇の在位期間が小刻みだったので、冷泉上皇、円融上皇も健在で、皇后三宮に空きがないという状況だったのです。

I:本来であれば、一条帝唯一の女御である藤原定子が立后してもおかしくないのに、空席がなかったということですね。

A:はい。ということで、定子を中宮にすると「皇后が4人」という前例にない事態になり、公卿の多くは「ありえぬ」と意見を表明したわけです。ところが、道隆は、公卿らの反対を押しのけて定子を一条天皇の中宮にしてしまいます。

I:4人いたらいけないんですかね?

A:実資が日記に書いたように「前例がない」ということに尽きるのではないですかね。さて、劇中ではこれを以て、「道隆の独裁が始まった」と説明していましたが、さてどうでしょう。確かに道隆の独裁・暴走が始まりますが、今後藤原道長が、道隆がつくった「前例」を利用するのかしないのか。

I:ここでは、「道長の栄華の種が撒かれた」といっておきましょう。

※『小右記』は国際日本文化研究センターの「摂関期古記録データベース」からの引用です。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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