同時代にいた源信と道長

盗賊に矢を射る道長(演・柄本佑)。(C)NHK

A:少し本編からは脱線しますが、劇中の時代をより深く知るために、あえて言及したいことがあります。今週描かれた985年とほぼ同時期に源信という僧が『往生要集』という書物を著しています。歴史教科書ではおなじみの書物ですが、極楽と地獄の概念を最初に確立した我が国の宗教思想史上の重要書物になります。昨年の大河ドラマ『どうする家康』でも登場した「厭離穢土欣求浄土(おんりえどごんぐじょうど)」も『往生要集』がその源流になります。

I:およそ580年後に家康が掲げたスローガンの源流が『光る君へ』の時代だったのですね。さて、源信は、後に藤原道長も帰依したという高僧ですから、『光る君へ』でも登場するかもしれないですね。

A:そうです。道長は仏教に篤く帰依し、九体阿弥陀堂(後に法成寺)とその本尊である阿弥陀如来像を建立。最期の時もそこで迎えています。現代までに多くの仏像が戦火などで消滅していますが、私にとっては失われた仏像たちの中でもっとも拝観したいのが、法成寺の阿弥陀如来像です。いったいどのようなお姿だったのでしょうか。

I:法成寺と九体の如来像、登場しますかね?

A:楽しみにしておきましょう。さて、本編から脱線したついでにもうひとつ。日本は摂関時代の後に院政時代を経て、武士の世になっていきますが、『光る君へ』の時代には源頼朝らの先祖たちが藤原兼家配下といて躍動していました。

I:頼朝の先祖というと源頼信ですね。頼信の兄頼光の家臣では「金太郎」のモデルである坂田金時が有名ですが、このふたりは兼家→道長に仕えていますね。

A:源氏の武将らも登場するのでしょうか。

I:そういえば、今週もちらっと源倫子の側には愛猫・小麻呂(こまろ)が登場しましたね。これは、源倫子、藤原彰子、一条天皇つながりで、今後も猫が登場してくる気配がしますね……。

A:それは愛猫家にとっては朗報ですね。一条天皇の愛猫「命婦の御許(みょうぶのおとど)」 のキャスティングがどうなるのか、めちゃくちゃ気になりますね。藤原実資(演・秋山竜次)の日記『小右記』に描かれている猫のエピソードなど、平安中期の猫の物語をBSでやってほしいですね。

I:また、そんなことをいう……。

※『蜻蛉日記』『栄花物語』の原文、訳文はすべて『新編 日本古典文学全集』(小学館)の当該巻からの引用です。

まひろ(右/演・吉高由里子)とききょう(左/演・ファーストサマーウイカ)が初対面。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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