平清盛の娘の入内、そして源頼朝の入内工作

A:教科書的には摂関政治から院政の時代に移って、政治の実権は皇位を譲った後の上皇に移行するという流れになります。白河上皇とか後白河上皇の時代ですね。

I:2012年の大河ドラマ『平清盛』や一昨年の『鎌倉殿の13人』でも描かれましたが、武家として初めて太政大臣になった平清盛が娘の徳子を高倉天皇に入内させて、ふたりの間に誕生した皇子を安徳天皇として即位させます。

A:後に壇ノ浦の合戦で海中に沈んだ悲劇の天皇ですね。清盛も摂関時代同様に天皇の外祖父になることを志向したということは興味深いところです。

I:そして、その平家を滅ぼした源頼朝も娘の大姫や三幡を後鳥羽天皇に入内させようと工作します。これは一昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれました。

A:頼朝も天皇の外祖父という立場を得たかったということなのですかね。頼朝の工作は成就しなかったわけですが、その後の鎌倉北条氏や室町幕府の将軍家足利氏は、ともに入内工作など行ないませんでした。

I:信長もそうですし、秀吉は実の娘がいたらどうですかね?

A:摂関というくくりでいえば、秀吉は関白に就任しているわけです。『光る君へ』の時代の人々からしたら、秀吉のような人物が関白に就任するとは驚天動地の出来事だったと思います。

I:面白いのは昨年の『どうする家康』の主人公徳川家康が秀忠の娘和子を後水尾天皇に入内させようと工作していたことです。

A:入内は家康の死後に実現します。後水尾天皇と和子の間に生まれた内親王が後に明正天皇として即位したわけです。奈良時代以来の女帝が徳川家康のひ孫ということは感慨深いですね。

I:『光る君へ』で注目される「入内」について歴史思考してみました。

A:期せずして『鎌倉殿の13人』『どうする家康』にも触れることができましたね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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