年老いた家康(演・松本潤)最後の戦い。(C)NHK

ライターI(以下I):(しみじみと)『どうする家康』も残り3回になりました。松本潤さんの老けメイクがあまりにもはまっていて感慨深いです。

編集者A(以下A):本当ですね。終盤に入ってますます円熟というか熟成というか、なんだかこみあげてくるものを感じたりします。劇中では初回から約60年の時間が流れています。「今年も大河ドラマ視聴を完走できました」と自分自身の1年を振り返る時期でもあります。

I:さて、劇中では「国家安康」「君臣豊楽」という銘文について、幕府内で協議される場面が描かれました。林羅山(演・笑い飯 哲夫)、金地院崇伝(演・田山涼成)らが招集されたようです。私は「笑い飯」の漫才が好きだったりするのですが、哲夫さんが林羅山役と聞いて、「大丈夫なの?」と少し不安だったのですが、理屈っぽい学者をしっかり表現していたよう気がします。なんだか嬉しい瞬間でした。

A:意外なキャスティングがはまるというのは制作陣もしてやったりではないですかね。確かにもっと登場してもよかったのにと思わされるキャスティングでした。

I:細かいことはともかく、ざっくりあんな感じで議論されたのですかね。これを「徳川方の言いがかり」ととるか「豊臣方の失態、あるいは挑発」ととるか。劇中では本多正信(演・松山ケンイチ)が、「これを見逃せば幕府の権威は失墜し、豊臣はますます力を増大させてゆくでしょう。されど処罰すれば、徳川は豊臣を潰すために卑劣な言いがかりをつけたとみなされ、世を敵に回す」と解説していましたが……。

A:ここが大河ドラマのような歴史ドラマを楽しむ醍醐味なのですが、気になる方は奈良大学の河内将芳教授の『秀吉没後の豊臣と徳川:京都・東山大仏の変遷からたどる』(淡交社)を読まれたらと思います。「えー、そうだったんだ」となるかと思います。

かつては軍功ありの若武者だった片桐且元

秀吉子飼いの片桐且元(演・川島潤哉)。(C)NHK

I:ナレーションで加藤清正(演・淵上泰史)ら豊臣恩顧の大名たちが、亡くなったことが説明されました。

A:前週(https://serai.jp/hobby/1164403)もお話ししましたが、加藤清正は二条城での家康(演・松本潤)と秀頼(演・作間龍斗)の対面から、領地の熊本へ帰る途中に病を発し亡くなります。さらに同じく二条城の会見に同道した浅野幸長、さらには池田輝政などもほどなくして亡くなります。浅野幸長は秀吉(演・ムロツヨシ)の正室寧々(演・和久井映見)の実妹を娶った浅野長政の嫡男ですから、豊臣一門のような人物です。

I:徳川方に毒でも盛られたのではないかと噂されるのもしょうがないタイミングだったんですよね。

A:はい。そんなこんなで、片桐且元(演・川島潤哉)がクローズアップされるわけです。この且元も「賤ケ岳の七人槍」のひとりに数えられる秀吉子飼いの武将ではあります。

I:賤ケ岳の戦いは(天正11年/1583)、織田信長が本能寺で討たれた後の織田家の主導権争いで、羽柴秀吉と柴田勝家が雌雄を決した合戦です。加藤清正、福島正則、加藤嘉明、脇坂安治、糟屋武則、片桐且元、平野長泰といった若者たちが軍功をあげたというのですよね。

A:御三家、五大老とか奇数のごろ合わせの一環での「七本槍」ですが、実際には9人とも14人ともいわれ、多くの若者たちが武勲を得んと勇躍した合戦だったことがわかります。彼らは秀吉の立身に追随するように出世を重ねていったということです。

I:現代の会社や研究職なんかでもそうですが、誰の下に仕えるかというのは、本人の実力以上に重要ですよね。彼らは秀吉の下についたからこそ、ひとかどの武将になれたということですもんね。

A:七本槍のうち、加藤清正、福島正則、加藤嘉明は大大名になりますが、息子らの代で改易となりましたが……。

世界史から俯瞰する「大坂の陣の大筒」

大筒発射を指揮する本多正純(演・井上祐貴)。(C)NHK

A:今週は家康がイギリスから購入したカルバリン砲などの大筒が実戦で使われたことが描かれました。劇中の描写でも明らかなように、当時の砲弾は、着弾した際に炸裂するわけではないのですが、心理的な効果は抜群だったのではないでしょうか。

I:砲弾によって茶々の侍女が数人、落命したとも伝えられています。

A:劇中の家康は、戦を早く終わらせるために大筒を使用したと言っていました。あるいは実際にそういう考えだったのかもしれません。教科書的には16世紀半ばに種子島にわたってきた火縄銃ですが、日本人はあっという間に自前で生産できるようになり、戦国時代という背景があったとはいえ、世界でも有数の武器保有国になっていました。欧州ではすでにずいぶん前から火砲・大砲が戦場で威力を発揮していて、1571年にスペイン・ヴェネツイアなどの連合海軍がオスマン帝国海軍を破ったレパントの海戦などで、大砲の優劣が合戦の雌雄を決するようになっていました。家康はあるいはそういう情報に触れていたのかもしれません。日本の技術力をもってすれば、大筒もすぐに国産化されてしまうかもしれない。そうなったらまた終わりなき戦乱の世が続いてしまうと。

I:なるほど。

A:現に日本で大坂の陣が終焉したあとの欧州では、1618年から旧教徒と新教徒の争いが国家間の戦争に発展した三十年戦争が勃発して、数百万人が犠牲になる大戦争になりました。そういうことを考慮すると、キリシタン勢力が多く入城した大坂=豊臣側も、遠からず大筒を導入したかもしれません。そうなったら果てしない戦が延々と続いていたかもしれません。

I:家康は大戦争に発展するのを未然に防いだという解釈ですね。いわれてみればそんな気がしないでもありません。

A:少し脱線しますが、家康が大筒のことを〈あれ〉と表現していました。12月1日に発表された流行語大賞は「アレ( A・R・E)」でしたから、はからずもタイムリーな台詞になりましたね(笑)。

I:タイガースファンの方はにやにやしながら見たのではないですかね。

渡辺守綱は家康9男義直の後見人として参陣。次ページに続きます

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