高品質の音響設備でレコードが刻む豊かな音楽を堪能する贅沢な時間……。日本独特の文化を心ゆくまで体験できる、東京の名店を紹介する。
よく知られているA面だけを流すのが基本
この曲を聴くと、あの時代の懐かしい自分が蘇(よみがえ)る……。おもに1960〜80年代のシングルレコードを置く『スナック青春』。アイドルソングやロック、フォークなど邦楽・洋楽を問わず幅広いジャンルを用意し、客のリクエストに応えて、店主の溜(たまり)こづえさんがターンテーブルを操作する。山と積まれたドーナツ盤からお目当て
の一枚を選び出すその作業は、驚くばかりの素早さだ。
「カラオケが流行る前の店の形態です。どなたにもある思い出の曲やその時代の曲を探り出してかけたときに、お客様が喜ばれるのが一番嬉しいですね。レコードは皆さんがよく知っているA面だけを流すのが基本です」(溜さん)
溜さんが選んだ青春ソングは中村雅俊さんの『俺たちの旅』。ドラマの主題歌だったことから、登場人物の話題でも盛り上がるという。その歌声は、福井に本社を置くFURUSAKIのバックロードホーンスピーカーから溢れ出る。のびやかな低音が自慢の逸品だ。
東京のJR中野駅北口の入り組んだ路地の一角、一度立ち寄れば常連気分になれ、流れる曲をきっかけに客同士で話が盛り上がる。スナックの敷居を低くした、ゆるやかに音楽に親しめる店である。
スナック青春
東京都中野区中野5-56-12-2F
電話:03・3386・6021
営業時間:19時~翌1時
定休日:日曜、祝日
交通:JR中野駅から徒歩約3分
17席
取材・文/関屋淳子 撮影/高橋昌嗣
※この記事は『サライ』2023年6月号より転載しました。