最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか、「読めるけれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く力が衰えたと実感することもあります。
動画を見ながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「脳トレ漢字」第119回は、「自惚れ」をご紹介します。とある性格のことを指した言葉「自惚れ」、耳にしたことはあっても、漢字と結びつかないという方も少なくありません。
脳トレ漢字の動画を見ながら“読んで書く”ことで、記憶力を鍛えながら、漢字への造詣を深めてみてください。
「自惚れ」はなんと読む?
「自惚れ」という漢字、読み方に心当たりはありますか?「じぼれ」ではなく「○○ぼれ」とは……
正解は……
「うぬぼれ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「実際以上に自分が優れていると思い込んで得意になること」と説明されています。単に「優れた自分に得意気になる」のではなく、「実際以上に」という意味合いを含んだ言葉です。「自惚れが強い」「自惚れている」などと使われます。「自惚れ屋」とは「うぬぼれの強い人」やその性格を揶揄した表現です。
また、「うぬぼれ」には「己惚れ」という別表記もあります。
「自惚れ」の漢字の由来とは?
「自惚れ」を構成する漢字を一文字ずつ見ていきましょう。「自」は「自分」のことを、「惚」は「夢中になる」ことを指しています。「“自”分自身に“惚”れて、己を美化する」という様子からこの漢字が当てられました。
「自」は、訓読みで「じ」、訓読みで「みずか(ら)・おのずか(ら)・よ(り)」などと読みます。よく見る漢字ですが、日常生活の中で「うぬ」と読む機会はあまりありません。
「うぬ」は古語のひとつとされ、一人称と二人称どちらの用法もある言葉です。一人称の場合は「自分自身」を指します。「己(おのれ)」が変化して「うぬ」になったとされ、自分を卑下する意図で用いることが多いです。二人称として使う場合は、相手をののしって呼ぶ意味合いになり、現代における「お前」「貴様」と同じ語感を持ちます。
「自惚れ」の場合は「自分自身に惚れる」という一人称的な使われ方をしています。「うぬ」という言葉がもともと「己」だったことを踏まえると、「己惚れ」という表記も納得なのではないでしょうか。
ことわざ「相惚れ 自惚れ 片惚れ 岡惚れ」とは?
「自惚れ」を含んだことわざ「相惚れ 自惚れ 片惚れ 岡惚れ」をご存知でしょうか? こちらは「あいぼれ うぬぼれ かたぼれ おかぼれ」と読み、様々な恋愛の形を並べ「人が人を好きになる時の形には、色々なものがあること」を表現することわざになっています。
順に「相惚れ」は「両思いの恋」を、「自惚れ」は「ひとりよがりの恋」を、「片惚れ」は「片思いの恋」を、「岡惚れ」は「ひそかに憧れる恋」を意味するそう。4種の惚れ方が羅列されたことわざに入るほど「自惚れ」は誰もが抱いてしまう感情なのかもしれません。
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いかがでしたか? 今回の「自惚れ」のご紹介は皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 日々の小さな学びが「自惚れ」や知ったかぶりを防いでくれるはずです。
来週もお楽しみに。
文/トヨダリコ(京都メディアライン)
アニメーション/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
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