取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

夫人が体調をくずしたのを機に、自らブランチ作りに挑戦。今では、野菜を欠かさぬオリジナル献立が健康の源である。

【宮田了さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、玄米餅の海苔巻き、納豆の海苔巻き(炒り白胡麻)、野菜サラダ(プチトマト・グリーンアスパラガス・茹で椎茸・スナップエンドウ)、デザート(胡麻団子・本葛の冷菓)、低脂肪牛乳、菊いも茶。玄米餅は角餅1枚を3等分にして焼く。野菜サラダには、市販の油分をカットしたグリーンドレッシングか胡麻ドレッシングをかける。デザートは2品ともに『南国酒家』の特製だ

前列中央から時計回りに、玄米餅の海苔巻き、納豆の海苔巻き(炒り白胡麻)、野菜サラダ(プチトマト・グリーンアスパラガス・茹で椎茸・スナップエンドウ)、デザート(胡麻団子・本葛の冷菓)、低脂肪牛乳、菊いも茶。玄米餅は角餅1枚を3等分にして焼く。野菜サラダには、市販の油分をカットしたグリーンドレッシングか胡麻ドレッシングをかける。デザートは2品ともに『南国酒家』の特製だ

起き抜けに無糖ジャムを入れたヨーグルトを食べ、事務所兼書斎へ。「まず、その日の予定を確認して11時過ぎから食事の準備をしますが、20分もあれば調う」と宮田さん。

起き抜けに無糖ジャムを入れたヨーグルトを食べ、事務所兼書斎へ。「まず、その日の予定を確認して11時過ぎから食事の準備をしますが、20分もあれば調う」と宮田さん。

昭和36年、東京・渋谷に中国料理店が誕生した。広東料理の『南国酒家』である。その社主(オーナー)である宮田了(さとる)さんが語る。

「父・慶三郎は歯科医師で、医学博士でした。アメリカの学会に出席した折、ワシントンで目にした高層マンションに感銘を受け、日本初のマンション『渋谷コープ』を開発します。その1階と地下1階に作ったのが『南国酒家』で、料理長は中国人で父がオーナー。食道楽だった父らしい。その4年後、東京・神宮前に『コープ・オリンピア』が完成すると2号店が開業し、ここが今の原宿本店です」

慶三郎氏は歯科医でありながら不動産会社や中国料理店の経営にも携わり、さらに晩年には明海大学(旧城西歯科大学)や朝日大学(旧岐阜歯科大学)を創設してもいる。医師、実業家、教育者と実に多彩な人であった。

家族が揃った貴重な一葉。左から了さん、父・慶三郎さん、母・賤江(しずえ)さん、弟・侑(すすむ)さん、兄・甫(はじむ)さん。了さんが高校生の昭和29年頃、明治神宮の宝物殿前の芝生で。

家族が揃った貴重な一葉。左から了さん、父・慶三郎さん、母・賤江(しずえ)さん、弟・侑(すすむ)さん、兄・甫(はじむ)さん。了さんが高校生の昭和29年頃、明治神宮の宝物殿前の芝生で。

了さんは3人兄弟の次男として、東京・豊島区に生まれた。慶應義塾大学経済学部を卒業後、丸善石油(現コスモ石油)に入社するが、3年後には父に請われて、立ち上げと同時に『南国酒家』に入る。八面六臂の慶三郎氏でも、さすがにレストラン事業までは目が届かなかったのだろう。

東京オリンピックの翌年、昭和40年に完成した「コープ・オリンピア」。JR原宿駅前の表参道沿いに位置し、その規模と設備から東洋一と話題になった。ここに宮田さんの事務所兼書斎、社主を務める『南国酒家』がある。

東京オリンピックの翌年、昭和40年に完成した「コープ・オリンピア」。JR原宿駅前の表参道沿いに位置し、その規模と設備から東洋一と話題になった。ここに宮田さんの事務所兼書斎、社主を務める『南国酒家』がある。

塩分と糖分を控える

宮田さんはもともと夜型の朝寝坊で、若い時分から朝食よりもブランチ派。今も第1食目は、事務所兼書斎で摂るブランチだ。

「食事に気を遣ってくれていた妻が2年ほど前に体調をくずして入院。以来、妻の負担を軽くするために宮田流簡単創作ブランチを自分で作ることにしました」

そのポイントは(1)塩分控えめ、(2)糖質控えめ、(3)唐辛子、タバスコ、黒酢などの好物を使う、(4)おやつは果物や小魚、ナッツ類、カカオ増量のチョコレートなど、(5)腹八分目、の5つである。減塩のために納豆には添付のタレを半分だけかけ、炒り白胡麻で風味を足すという工夫、徹底ぶりだ。

ブランチの前に飲むアロエベラジュースには、ARGIプラス(アルギニン含有粉末)を溶かす。アロエベラは血糖値を上げにくくし、準必須アミノ酸であるアルギニンには免疫力を高め、新陳代謝を促す効果もあるといわれている。

ブランチの前に飲むアロエベラジュースには、ARGIプラス(アルギニン含有粉末)を溶かす。アロエベラは血糖値を上げにくくし、準必須アミノ酸であるアルギニンには免疫力を高め、新陳代謝を促す効果もあるといわれている。

「野菜サラダには一年中、トマトを欠かしません。このプチトマトはヘタを取るだけなので重宝。ドレッシングがのりやすいように、半分に切ります」と、事務所の台所に立つ。

「野菜サラダには一年中、トマトを欠かしません。このプチトマトはヘタを取るだけなので重宝。ドレッシングがのりやすいように、半分に切ります」と、事務所の台所に立つ。

月に2~3度の楽しみは『南国酒家』の元料理長で、今は後進の指導に当たっている宮川晃次さんが届けてくれる、宮田さんのための特製ブランチだ。

「このブランチと、特別な日に許しているスパゲティなどの糖質が一番のご馳走です」

●元料理長が作る社主のための特製ブランチ
前列角皿から時計回りに、サーモンの竜田揚げ(赤ピーマン・黄ピーマン・ヒラタケ・金針菜)、豚バラの焼き肉、揚げワンタンの甘酢かけ、梨のコンポート(キウイフルーツ・マンゴー・香菜)、ワンタンの柚子風味。糖質を制限しているために、ワンタンが主食代わり。ワンタンの柚子風味は宮田さんの好物だという。

前列角皿から時計回りに、サーモンの竜田揚げ(赤ピーマン・黄ピーマン・ヒラタケ・金針菜)、豚バラの焼き肉、揚げワンタンの甘酢かけ、梨のコンポート(キウイフルーツ・マンゴー・香菜)、ワンタンの柚子風味。糖質を制限しているために、ワンタンが主食代わり。ワンタンの柚子風味は宮田さんの好物だという。

木曜の午前中はジムで体を鍛え、午後は囲碁サロンで脳を鍛える

宮田さんが主宰する囲碁サロン“木曜会”の仲間と一緒に。中央左からふたり目が講士の西實さん、その右が宮田さん。性別、年齢、段位を問わず、囲碁好きの10人ほどが集まる。

宮田さんが主宰する囲碁サロン“木曜会”の仲間と一緒に。中央左からふたり目が講士の西實さん、その右が宮田さん。性別、年齢、段位を問わず、囲碁好きの10人ほどが集まる。

囲碁は、碁盤上で黒と白の石を交互に打ち、囲んだ領域の広さを競うゲーム。「単なる陣取り合戦なんだけど、打ち手の性格まで出るから面白い」という宮田さんは、アマ八段。

囲碁は、碁盤上で黒と白の石を交互に打ち、囲んだ領域の広さを競うゲーム。「単なる陣取り合戦なんだけど、打ち手の性格まで出るから面白い」という宮田さんは、アマ八段。

毎週木曜日の午後1時頃から三々五々、人が集まってくる。宮田さんが事務所の一室で開催している囲碁サロン“木曜会”のメンバーだ。社長の職を息子に譲った後、囲碁好きが高じて5~6年ほど前から開いているものだ。

「参加者の腕前は問わない。初心者も大歓迎です。第1、第3木曜日には日本棋院普及指導員の講士、西實先生の指導碁もあります」

宮田さんに囲碁の手ほどきをしたのは父・慶三郎氏。だが、小学6年生か中学1年生の頃には、宮田さん曰く“田舎初段”の父を抜くほどの腕前だった。30~40年前からは月に2回、平成28年に亡くなった小杉勝八段に個人指導を受けてきたという。

「僕の棋風は、ひと言でいうと負けず嫌い。父と打っていた子供の頃、負けて碁盤の上に落とした涙は未だ記憶に新しい。終わると、カラッとしてるんだけどね」

宮田さんにとって、木曜日はかけがえのない一日。午前中はスポーツジムで体を鍛え、午後からは囲碁で脳を鍛える。宮田流簡単創作ブランチと、この木曜日が心身の健康を支えている。

「毎日5000~6000歩は歩くようにしていますが、それに達しない日はウォーキング」と自宅近くの新国立競技場辺りを歩く。

「毎日5000~6000歩は歩くようにしていますが、それに達しない日はウォーキング」と自宅近くの新国立競技場辺りを歩く。

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

※この記事は『サライ』本誌2020年1月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。

 

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