
漆黒の底から、青が滲み出るように生まれています。まるで夜明け前の空が、ゆっくりと光を取り戻すように——。〈クレドール〉の新作「ゴールドフェザー 漆芸ダイヤル」は、日本の伝統工芸が現代の腕時計に宿ることで、いかなる美が生まれうるかを静かに問いかけてきます。
文/土田貴史
ダイヤルに宿る、深海の静謐
文字盤を正面から見ると、その色彩の深さに思わず言葉を失います。外縁の漆黒から中央の青へと、色はただ変わるのではなく、溶け合いながら移ろっていきます。このグラデーションは華やかな彩りとはまったく異なる情緒を帯び、深海の静謐、あるいは夜空の奥底を思わせるイメージを心に呼び起こします。
この色は偶然には生まれません。黒漆との調和を追求し、彩度を幾度も調整した末に、熟練の匠がようやくたどり着いた「青」です。漆本来の重厚さを損なわぬよう、深みと色彩のさじ加減は極めて繊細な領域で調整されています。

塗りと砥石による研ぎを幾重にも繰り返し、最終工程では匠が指先の感覚だけを頼りにダイヤルを磨き上げます。曲面を持つダイヤルは角度をわずかに誤るだけで均一なグラデーションが崩れてしまうため、研ぎ澄まされた感覚と高い集中力が欠かせません。

完成したダイヤルに宿る艶は、数えきれない工程と、指先に蓄積された経験の結晶にほかなりません。静謐の中に深みを見出す日本独自の美意識が、直径約37mm程度の円の中に凝縮されています。
高蒔絵が刻む、光の陰影
このダイヤルをさらに豊かにするのが、12か所のインデックス、そして「CREDOR」のロゴと6時位置の「Goldfeather」の文字に施された高蒔絵です。漆で絵柄を盛り上げた上に金粉を蒔く高蒔絵は、そのわずかな立体感が光を受けるたびに繊細な陰影を生み出し、平面的な文字盤に確かな奥行きと生命感を与えます。

採用されたのはプラチナ粉です。深みある青のダイヤルカラーに対して金とは異なる冷ややかな輝きが格調ある対比を生みます。プラチナ粉は非常に硬質で扱いが難しく、微細粒子への加工には鯛牙に加えて金属ヘラも駆使します。その仕上がりの美しさは、手間を惜しまぬ職人の矜持そのものです。
時計という精密機能体の上に、日本の美意識が静かに息づく——高蒔絵のインデックスは、そのことを雄弁に物語っています。
黄金の頂きへ、半世紀にわたる信念
1974年の創設以来、〈クレドール〉はドレスウオッチの探求に専心してきました。ブランド名が意味する「黄金の頂き」は単なる商標ではなく、品質と美を極めるという揺るぎない信念の象徴です。伝統技術への敬意と現代技術への挑戦を両立させてきたその歩みは、日本のドレスウオッチブランドとしての確かな履歴を携えています。

本作が纏うのは、「セイコー ゴールドフェザー」の意匠です。1960年に誕生したセイコーの薄型メカニカルウオッチの先駆けを、〈クレドール〉は2023年に受け継ぎました。羽根のように薄く、軽やかで、優美。そのコンセプトはプラチナ950製ケースとして現代に甦り、ケース径37.4mm、厚さわずか8.1mmという佇まいを実現しています。数字が示す以上の、空気をはらむような軽みを、実際に手にすれば感じ取ることができるでしょう。
ムーブメントは、岩手県雫石町の雫石高級時計工房が手掛けるキャリバー6890です。高度な技能を持つ時計師が組立・調整からケーシングまでを一貫して担う、手巻きの機械式です。パワーリザーブは最大約37時間、振動数21,600振動/時。

ストラップにはLWG(レザーワーキンググループ)認証タンナーで生産されたクロコダイルレザーを採用しています。美錠はケースと同じプラチナ950製です。時計のすべてのパーツに、同じ哲学が貫かれています。

品番|GBBY967
価格|550万円(税込)
ケース|プラチナ950 外径37.4mm、厚さ8.1mm
ムーブメント|手巻き キャリバー6890(雫石高級時計工房製)
パワーリザーブ|最大約37時間
振動数|21,600振動/時(6振動/秒) 22石
ガラス|ボックス型サファイアガラス(内面無反射コーティング)
ストラップ|クロコダイル(プラチナ950美錠)
防水性能|日常生活用防水(3気圧)
限定数量|全世界25本(国内15本)
発売日|2026年6月5日(金)
お問い合わせ/クレドールお客様相談室 0120-302-617
https://www.credor.com





