文/印南敦史

写真はイメージです

当然ながら、加齢とともに気になってくるのが健康に関する問題だ。巷には刺激的な見出しのついた情報があふれているだけに、ときにはそれらを目にし、必要以上に不安を感じてしまうことになるかもしれない。

だが忘れるべきでないのは、「すべての情報が正しいとは限らない」という事実である。したがって我々は気になる健康情報を前にしたとき、「それが実績ある医師による適切な情報であるか否か」を確認する必要があるのだ。

そういう意味で頼りになりそうなのが、『名医に聞く健康法』(中央公論新社 編、中公新書ラクレ)。和田秀樹、小林弘幸、浦上克哉、坪田聡、能勢博、小川郁ら17名もの“スーパードクター”が、それぞれの専門領域における最新知見と、それに基づく健康情報を解説している新書である。

最大のポイントは、認知症やがんに代表される病気はもちろんのこと、筋力低下、不眠、メンタル不調など、中高年が気になる症状に関する情報を幅広く網羅している点。すべてが専門医ならではの視点に基づいているため、とても実用的な内容になっているのだ。

ここでは眼科専門医の平松類氏による、「一生使う目を長持ちさせるアイケア」という項目に焦点を当ててみたい。いうまでもなく、紹介されているのは「長く目の健康を維持するための正しいケア方法」である。

目の健康を維持するには、意識的に目を休める時間をつくることが大切です。スマホをはじめ、書き物、ミシンがけや手芸など、手元で行う作業は目に負担がかかります。1時間に1回は休憩をとりましょう。2メートル先を5分程度見るだけでも毛様体筋(筆者注:眼球内の水晶体を調節してピントを合わせる筋肉)のストレッチになり、目が休まります。(本書191ページより)

次に、平松氏が推奨する「目の健康5ヵ条」をご紹介しよう。どれも簡単なことなので、無理なく取り入れられそうだ。

1 ほうれん草と青魚を積極的に

網膜の中心の「黄斑」にある色素には目を守る働きがあるが、加齢とともに減少し、光のダメージを受けやすくなる。そこで意識的にとるべき栄養素が、「ルテイン」と「DHA & EPA」だという。

ルテインは、天然のサングラスとも呼ばれる栄養素で、ほうれん草やゴーヤー、ケールなどに多く含まれています。青魚などに豊富に含まれるDHA & EPAは、涙の質を改善し、ドライアイを予防するのに有効な栄養素です。(本書193ページより)

したがって、どちらも不足しないように食事やサプリメントでしっかり補うことが大切なのである。

2 週3回の散歩、ウォーキングで血行促進

血流を促すことができるため、散歩やウォーキングも目の健康には不可欠。1回30分以上、週3日以上行うことを心がけたい。運動時は近くから遠くまでいろいろなところに視線が動くため、毛様体筋のいいストレッチにもなり、眼精疲労の解消にもつながるそうだ。

3 ホットタオルでじんわり温める

濡らして絞ったタオルを電子レンジ(600W)で30秒ほど温め、目の上にのせる。すると目のまわりの血行が促され、眼精疲労の回復に有効だという。じんわりと温まってリラックス効果もあるため、夜、寝る前の習慣にするといいようだ。

なお、熱すぎると感じた場合は無理をせず、少し冷ましてからのせるようにしよう。

4 こまめな点眼で乾燥を防ぐ

目が乾燥すると、見えづらさや疲れを感じるだけでなく、目の表面が傷つきやすくもなる。そこで、こまめに目薬をさして乾燥を防ぐことも大切だ。

また、目薬は一度開封したら、使い切れなかったとしても2か月で処分するほうがいい。開けてから長期間たつと細菌が繁殖し、目の健康に悪影響を及ぼす可能性があるからである。

5 2年に一度は眼鏡のチェック

度が合わない眼鏡は、それだけで目に負担をかけてしまうことになる。そればかりか近視も老眼も進行するため、2年に一度はチェックを。そして合わなくなっている場合は、作り替えることが重要だ。

同じくレンズのコーティングも、2年くらいで効果が薄れる可能性が高いそうだ。

* * *

たとえばこのように、健康に関する知識が簡潔にまとめられた一冊。より快適に過ごすために、活用してみる価値は大いにありそうだ。

『名医に聞く健康法』
中央公論新社 編
1155円
中公新書ラクレ

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2025年
6月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店