人口の3分の1が65歳以上の高齢者である現代社会において、介護問題は多くの人々にふりかかってくるものです。
しかし、知識を持たないまま介護を始めてしまうと、介護されるご本人も、その家族も不安を抱え、後悔をすることになってしまうことも。そして、それは、介護される方のQuality of Life(生活の質)を下げてしまうことにもなります。
そこで、自身の親の介護を経験し、リハビリ専門デイサービスを経営する神戸利文さんと、理学療法士の上村理絵さんの共著『道路を渡れない老人たち』から、知っておきたい介護の基礎知識をご紹介します。
文 /神戸利文・上村理絵
介護費用は、医療費も含めて年間100万円以上
それでは、実際に介護をするとなったら、どれぐらいのお金がかかるのでしょうか?
公益財団法人生命保険文化センターの調べによると、手すりをつけたり、介護用ベッドを購入したりする、住宅改造・介護受け入れ準備のための一時費用の合計額の平均は69万円です。また、毎月の介護にかかる費用の平均額は介護保険の自己負担分を含めて7.8万 円、全体の3割以上は10万円以上となっています。
私自身、父親の介護の準備を始めるにあたって、本人が病院でリハビリを行っている間に、まず自宅のリフォームにとりかかりました。
父はパーキンソン病を発症し、パーキンソン病には手足の震えや、歩行困難などの症状があるため、自宅で車いすを利用する必要があり、暮らしていくうえでは、どうしても屋内と車庫のスロープをリフォームをしなければならなかったのです。
そして、その後の介護費用は、要介護3〜5の段階からは限度額を超える月もあり、入院、検査などの医療費も含めて、年間で100万円以上かかりました。
医療費については、父の医療費を自分の世帯の医療費と合算して計上し、節税することにしました。法的にも問題はなく、それによって所得税が軽減されるので、その分をまた別の介護に関する支出に充てることができます。
また、費用面において介護保険の限度枠を超えてしまうと自己負担になります。限度額を超えたとき、もし「訪問看護や訪問リハビリ」をケアプランに入れてもらっていた場合などは、ケアマネジャーや訪問の医療専門職などに相談し、かかりつけ医の指示の下、看護とリハビリを医療保険で利用できるようにしてもらってみてください。
そうすることで、介護保険の限度枠に余裕ができ、自費で支払わなくてはならない分を、介護保険適用枠にすることも可能となります。
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『道路を渡れない老人たち』 神戸利文・上村理絵著
アスコム
神戸利文(かんべ・としふみ)
合弁会社・株式会社保険市場の代表取締役を務めるなど、保険業界を中心に活躍をしていた中、自身の親の介護の実体験がきっかけとなり「理学療法士によるリバビリテーション」「日本で初めて介護保険分野で受けられるサービス」を世に誕生させた誠和医科学(現・ポシブル医科学株式会社)と出会う。生活期のリハビリの重要性を説く考えに共感し、その経営に参画した。同社を退任後、生活期のリハビリが不毛不足する東京関東圏に進出するため、リタポンテ株式会社を設立。リハビリ専門デイサービスリタポンテを新宿区で開業。「日本から寝たきりをなくすために、おせっかいを科学する」を合言葉に、リハビリを中心とした介護サービス事業を展開する。
上村理絵(かみむら・りえ)
理学療法士。リタポンテ 執行役員事業部長。1974年生まれ。中京女子大学(現・至学館大学)卒業後、関西女子医療技術専門学校理学療法学科(現・関西福祉科学大学)を経て、理学療法士として活動。塩中雅博氏のポシブル医科学株式会社の創業を支援。およそ10年間で、のべ16万人に生活期のリハビリを提供し、そのビジネスモデルの骨格を現場で作り上げてきた。同社退任後、神戸とともに、リタポンテ株式会社を立ち上げ、理学療法士の立場から、「高齢者に本当に大切なリハビリ」を提供している。