環境省も推奨する新時代の“温泉保養術”

自然に囲まれる『界 箱根』の半露天風呂を楽しむ北出さん。「お湯の中で足首をグルグル回すとむくみや疲労の改善に効果的です」

案内人 北出恭子さん(温泉家)

国内外の温泉を年間300湯以上巡る専門家。多数の温泉資格や知見を活かし、講演やメディア出演などで温泉の魅力を世界に発信。地域資源の創出や温泉地づくりの監修も行なう。著書に『九州絶品温泉、ドコ行こ?』(ペガサス出版)など。

古来、日本人は病気からの回復や、蓄積した疲労を癒す目的で湯治を行なってきた。湯治は本来、温泉地に少なくとも1週間以上滞在するものだが、現代の生活様式ではなかなか難しい。しかし温泉を楽しみながら健康増進を図るという“現代版の湯治”を打ち出す温泉地が増え、2泊3日や1泊2日の滞在でも、一定の効果や効能が認められつつある。環境省もこれらを「新・湯治」と銘打ち、温泉入浴に加えて周辺の自然や歴史・文化、食という魅力を活性化する取り組みを推奨している。

現代版の湯治を提唱する宿のひとつに星野リゾートの温泉旅館「界」がある。「界」は全国に18施設あり「王道なのに、あたらしい。」をテーマに様々な新サービスを提供。独自の「うるはし現代湯治」もそのひとつだ。そこで、国内外の温泉事情に明るい温泉家の北出恭子さんと、『界 箱根』で“現代版の湯治”を体験してみた。

チェックイン後、さっそく大浴場へ。須雲川の清流を眼下にする清々しい半露天風呂では、思い切り四肢を伸ばして寛ぐ。

「目の前に広がる山の樹々や空を飛ぶ鳥、手が届きそうなほど近くに川のせせらぎを感じながら入る温泉は、まるで大自然の中の野天風呂に入っているかのようですね」と、北出さんも日常を離れた解放感を満喫する。

文明開化を連想させる鍋

湯上がりビールセット1200円。糀を使ったオリジナルビールと豆腐に酒盗、練り梅、神奈川産の柑橘・湘南ゴールドを使った塩で。
奥左から小松菜のお浸し、鶏と柚子の松風、棒寿司、塩焼き芋、銀杏などの八寸と、手前はお造りでシマアジ、鯛、炙り太刀魚。

夕食は特別会席「明治の牛鍋」である。先付や八寸、お造りなどと続き、避暑地として欧米人に親しまれた明治の箱根を連想させる牛鍋が登場。当時は肉の冷蔵保存が難しく、肉のぶつ切りを使用したことに因み、豪快な厚切り肉を、味噌仕立てで供している。

明治の牛鍋(2人前)。赤味噌に酒、砂糖を合わせたベースに鰹と昆布の出汁を注ぐ。味噌の風味が牛肉に甘みを添える。

夕食後は温泉の知識と呼吸法を知る「温泉いろは」に参加。丹田(へそから指3本下)を意識し、4拍鼻から息を吸い、8拍細く息を吐き出す呼吸法は入浴中の呼吸法としても大いに活用したい。

毎日19時に開催する「温泉いろは」では、箱根の温泉の知識と解説のあと、免疫力を向上させる呼吸法と瞑想の時間を設けている。

特製の生姜湯やオリジナル体操で心身のリラックス効果を高める

露天風呂付きの客室で寛ぐ北出さん。客室でマッサージ(45分7150円~)を受けることもでき、さらなるリラックス効果も。

客室は箱根の伝統工芸、寄木細工を設えた和洋室や、露天風呂付きの洋室などがある。モダンで色彩が豊かな寄木細工を手に取れば、その美しさを身近に感じることができる。さらに館内のトラベルライブラリーでは毎晩、寄木細工の魅力を紙芝居で紹介するイベント「寄木CHAYA」を開催している。

部屋で寛ぎ、就寝前には黒酢や黒糖入りの特製生姜湯を。生姜の成分が安眠へ導いてくれる。

就寝前は生の生姜を搾った特製の生姜湯と、生姜ゼリーを。生姜に含まれるジンゲロールという辛み成分が血管を拡張し、血行を良くする。

朝のストレッチで爽快に

翌朝、わらじを履いて箱根越えをした先人に倣い、「わらじ体操」を体験。体が目覚め、朝の入浴の準備も整う。大浴場へ向かう途中には、温泉のメカニズムや温泉分析書の見方などを解説する温泉ギャラリーがあり、正しい温泉の知識も得られる。

毎朝7時から20分ほど開催される「わらじ体操」。わらじを履くのは初めてという北出さんは「足裏が刺激されますね」と語る。

「ここの包み込まれるようなやさしい肌触りの湯は、塩化物泉という泉質から保温力が高く、体の芯からよく温まります。湯上がりもポカポカ感が持続しますね」と、北出さんも朝の湯浴みを楽しんだ。

江戸時代、箱根湯本温泉は東海道を往還する旅人が「一夜湯治」という形で宿泊が認められた。なるほど現代版の一夜湯治も、創意工夫されたプログラムや温泉の力によって心身が蘇る体験となった。


界 箱根

2012年開業。客室はすべて湯坂山に面する。総支配人の立川久美子さんは、現代湯治の効果と箱根のご当地の魅力を伝えたいと話す。

神奈川県足柄下郡箱根町湯本茶屋230 電話:0570・073・011(界予約センター) 料金:3万1000円~(全32室、チェックイン15時、チェックアウト12時) 泉質:塩化物泉 交通:小田急線箱根湯本駅からタクシーで約7分

『サライ』12月号では、「名湯に秘史あり」と題し、聖徳太子や源頼朝、武田信玄が愛した名湯や旬の食材や名物料理を堪能できる「湯食同源の宿」を紹介。年末年始のご旅行、湯治場選びの参考にしてください。

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※この記事は『サライ』本誌2021年12月号より転載しました。

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