取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)

新型コロナによる自粛期間中、運動不足解消のため散歩したりジョギングしたり、なかにはYou tubeの動画を見て自宅でトレーニングを始めたという人もいるでしょう。ところが、せっかく運動を始めたのに足のトラブルを抱える人が増えているそうです。足のクリニック院長の桑原靖先生(以下、桑原)とパーソナルトレーナの松井直樹さん(以下、松井)に話を聞きました。

電車通勤しただけで足が痛む?

――コロナ自粛で足のトラブルが増えているそうですが、典型的なパターンがあるのでしょうか。

桑原 「足は地面からの衝撃を受け続けないと筋肉や関節の機能がどんどん低下するのですが、負荷が大きすぎても痛みを感じるようになり、元に戻せなくなってしまいます。もちろん、限界に達する前に痛みを感じるので、人は普段から関節や骨に負担がかからないレベル、つまり筋力で支えられる範囲で生活しています。

ところがコロナ自粛で、家にこもっていることが多くなり、まるで入院生活を送っているような状態が続くと、知らず知らずのうちに足の機能が著しく低下し、電車通勤をしただけで足が痛い!ということになるのです」

――機能低下を防ぐためにはどのような生活を送ればいいのでしょうか。

松井 「自粛期間中でも、日常生活レベル、たとえば立ったり歩いたりしている時間や運動量が自粛前と変わらないようにしましょう。重力がかかることで足の機能低下を防ぐことができます。動かないと体重が増えやすくなりますが、体重が増加すると身体を支える筋力が必要になります。極端に太らないように注意してください」

いきなり頑張って強度の高い運動をしない

――ジョギングや散歩をする人も増えましたね。

桑原 「運動不足解消のために急に運動を始める人も多いのですが、カロリー消費はできても、急激に負荷をかけると足を痛める原因になります。なかには、運動不足が原因で足が痛むのではないかと思い込み、さらに負荷をかけ続けて膝や股関節を傷める人もいます。ランニングをするのであれば、少しずつ距離を伸ばして運動能力を上げていくといいでしょう。痛みを感じたら治るまで運動を中断してください」

――ついつい頑張ってしまう人の気持ちも分かりますが。

松井 「いきなり強度の高い運動をせずに、焦らず、まずは日常生活レベルから始めます。運動をする前に自分自身の姿勢を知ること。必要であれば改善することが大事です。姿勢がいい人は前後左右の筋肉のバランスが取れているので、関節に負担がかかるのを防ぐことができます。次に、筋肉痛を感じたらその部位は休めて、ストレッチなどのケアをするよう心がけましょう。関節に痛みや違和感を感じる時は、運動の仕方を見直すことをお勧めします」

オンラインレッスンをする時に注意したいこと

――オンラインレッスンもいろいろ配信されているので試してみたくなりますが。

桑原 「オンラインレッスンが普及したため、激しい運動を自宅でする人も増えています。ただ、スポーツクラブや屋外と違い、シューズを履かないで運動すると足をサポートすることができず、一気に負荷がかかって足を傷めてしまう人が多いのです。シューズも足に合ったものを選ばないと、バランスを崩さないよう無意識に余計な筋肉を使うので痛みや疲れを感じてしまいます」

――オンラインレッスンを選ぶ時の注意点はありますか。

松井 「まず、自分に合ったオンラインレッスンを選びましょう。配信者が誰をターゲットにしているのか、年齢や性別、運動初心者なのか中級者なのかということを参考にします。配信者は直接あなたを見てトレーニングのアドバイスをするわけではないので、自分に合っているかどうか考える必要があるのです。また、運動の理論が明確で、効果と怪我のリスクをきちんと説明しているかどうかという点も良質なオンラインレッスンを選ぶ基準になります」


桑原 靖 足のクリニック表参道 院長。2004年、埼玉医科大学医学部を卒業。同大学病院形成外科にて医長、フットケア担当医を務める。2013年、東京・表参道に日本初の足専門医療機関を開院。専門医と専門メディカルスタッフによるチーム医療を行い足の総合的な治療とケアを行う。日本フットケア・足病医学会評議員。著書に『元気足の作り方「美と健康のためのセルフケア」(NHK出版)』、『女性のつらい外反母趾がラクになる(PHP研究所)』、『日常診療でよく出会う足病変の診かた(中外医学社)』他。

松井直樹 YMCA社会体育専門学校卒業。関西メディカルトレーナー学院卒業。大手スポーツクラブにて延べ15年間、パーソナルトレーナーとして勤務。健康運動実践指導者、PHI(ピラティス)インストラクター、BFR(血流制限トレーニング)インストラクター、ダイエット検定1級


取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。小学館サライ.jp、文春オンライン、朝日新聞社telling、Sippo、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。

 

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